「飲み水もクジ引き」 ある脱北一家が語る“北朝鮮で生きること”の過酷さとは?『ビヨンド・ユートピア 脱北』本編インタビュー映像解禁

『ビヨンド・ユートピア 脱北』© TGW7N, LLC 2023 All Rights Reserved

決死の「脱北」全行程を捉えたリアルスリラー

2023年サンダンス映画祭でUSドキュメンタリー部門観客賞を受賞し、2023年のベスト・ドキュメンタリーの呼び声高い『ビヨンド・ユートピア 脱北』が、2014年1月12日(金)より全国公開となる。

史上初となる、隠しカメラや携帯電話により撮影された脱北の全行程を映し出した本作の中心となるのは、祖国北朝鮮を離れたばかりのある家族だ。いくつもの国境や川、険しい山岳地帯を超えて危険な旅に乗り出す2人の幼い子どもと80代の老婆を含む5人の家族、彼らのために実に50人以上のブローカーが協力し、脱北ののち中国、ベトナム、ラオス、タイの4カ国を経由し最終目的地である韓国を目指す、総移動距離1万2千キロメートルの決死の脱出作戦が展開される。

第96回アカデミー賞「長編ドキュメンタリー賞」ショートリストに選出

本作は、2023年サンダンス映画祭で圧倒的な支持を得てUSドキュメンタリー部門観客賞を受賞したほか、ウッドストック映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞など2冠、ハンプトン国際映画祭で最優秀作品賞など2冠をはじめ7つの賞を獲得。21の賞にノミネートを果たし、先日発表された第96回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞のショートリスト(ノミネート前の候補作)に選出された。

各映画メディアや評論家の間では2023年のベスト・ドキュメンタリーの呼び声が高く、日本公開後に控える1月23日のアカデミーノミネーションの行方にも注目が集まる。

このたび解禁されたのは、北朝鮮を脱出して韓国を目指すある一家が、その途中でインタビューに答える貴重な様子を捉えた本編映像だ。

「北朝鮮には水も明かりもありません」

北朝鮮を脱出し中国の山間部で路頭に迷っていたロ一家は、韓国で20年以上に渡り脱北者の支援活動を続けてきたキム・ソンウン牧師に助けを求め、彼らのサポートを受け中国を抜けてベトナムのラオス国境付近まで到達。支援者が用意した隠れ家で旅の疲れを癒していた。

この本編映像は、本作の撮影クルーによる一家へのインタビューの場面。見るもの全てが目新しい家族は、この場所のふんだんに水が出るシャワーに驚いたばかりで、一家の父親は「北朝鮮には水も明かりもありません」と語り始める。妻も加わり祖国で水を得るための苦労を語り、「そんなわけで、ここは本当に天国です」とリラックスした笑顔で答える。一方で、80年以上北朝鮮で生きてきた祖母は金正恩総書記の功績と裏腹に貧しい国の現実を嘆き、長女は植え付けられてきた強烈な恐怖を思い出し泣き出してしまう。

多くの作品などに登場する“脱北者”が韓国など亡命先にたどり着き新たな社会に順応し始めた後であるのに対し、本作では稀といえる北朝鮮から逃れて間もない人々に密着。同じ家族であっても様々に異なる証言を捉えたこの映像は、生々しく貴重なインタビューシーンとなっている。

「今まで信じ込まされていた嘘から脱却し、事実を受け入れていく様」

本作のマドレーヌ・ギャヴィン監督は、この家族の脱北に密着したことについて、「ほとんどの場合、私のような人間が脱北者に出会うころには、その脱北者は韓国、または他の国に到着し、ATMの使い方や民主主義の概念などを紹介する施設に滞在しています。そこで彼らは北朝鮮の外の世界に適応するプロセスを始めています。だから、国外脱出後すぐの亡命者に会うことは極めて稀なのです。私たちは撮影を通じてロ一家の皆さんが新しい社会への適応を試みる経過を、これまでにない方法で経験することができました」と振り返る。

さらに、この映像で強い印象を残す祖母との交流について、「私がおばあさんに会ったとき、彼女の葛藤をひしひしと感じました。彼女は、私たちとの体験と、彼女が過去80年以上にわたって北朝鮮で聞かされてきたこととの間で葛藤していたのです。彼女の年齢まで祖国を深く愛していた人が、今まで信じ込まされていた嘘から脱却し、事実を受け入れていく様を見るのは、とても力強く、感動的でもありました」と明かしている。

『ビヨンド・ユートピア 脱北』は2014年1月12日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

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