大雨被害から畑再生 茨城・日立の農園 野菜収穫、続ける挑戦

被災した農地でダイコンを収穫する樫村智生さん=日立市十王町伊師

台風13号に伴う記録的大雨から4カ月余り。浸水被害に遭った茨城県日立市の農園では、大雨で種や土壌が流された畑を再生し、年末には何とか冬野菜の収穫にこぎ着けた。豪雨や高温など異常気象の頻発を受け、被災農家は農園経営の転換を見据えている。

■流れた土壌

同市十王町伊師の「樫村ふぁーむ」。多賀山地と太平洋を見渡す農園では昨年12月下旬、たくあん用ダイコンの天日干し作業が行われていた。

「例年より収穫は遅れたが間に合ってよかった」。2代目の樫村智生さん(34)は太く真っすぐ育ったダイコンを見つめ、ほっとした表情を浮かべた。

東京ドーム約3個分の農地で、年間100種類以上の野菜を栽培している。昨年9月8日の大雨では、前日に種をまき終えたダイコンやカブ、ニンジンなどの畑一面が茶色の水で覆われた。「川が走ったように」土壌ごと流され、ほぼ全滅となった。

被害は水田を含めると1ヘクタール以上。水が引いた後、乾いてひび割れした土壌に空気を入れるなど1~2週間は様子を見たが、結局、苗は枯れてしまった。「いよいよ駄目かなと思った」と振り返る。

稲刈りや春野菜の種まき作業を同時並行でこなしながら、秋冬の作付け計画を練り直す日々。一から土を掘り起こし、被災から約3週間後には急いで買い集めた種をまき直した。「何とかしないといけない、その一心だった」

遅れを取り戻すため、例年より株間を広くして成長を促すなどの工夫を加えた結果、無事に冬野菜の収穫期を迎えられた。それでも減収は免れないが、樫村さんは「今季は我慢の時」と前を向く。

■適量多品目

資材高騰や猛暑による高温障害に、追い打ちをかけたのが大雨被害だった。樫村さんは「経営のあり方を見つめ直すきっかけになった」と話す。

長年、農薬や化学肥料を極力使わず、こだわりの有機野菜を作り続けてきた。かつては東京出荷が中心だったが、5年ほど前から地域に根差して販路を開拓するスタイルに切り替えた。

県北地域は高齢化と人口減少が進み、人手不足も深刻化している。この地域で、国が推進する農業の大規模化を実現するのは難しい。

「観光農園などを交えながら、『適量多品目』で取り組んでいくことになると思う」。取り巻く環境の変化に対応するため、「成功と失敗を繰り返しながら挑戦していくしかない」と話す。

■復旧長期化も

市によると、市内の農業被害は水田への土砂流入や水路の崩壊など67件あり、復旧費用は約1億8千万円に上る。市は国の支援が手厚くなる「局地激甚災害」の指定を受け、復旧工事の多くは今春までに終える予定だが、被害が大きかった一部地域は長期化が見込まれている。

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