病院断水、少ない情報と医療資源… 能登被災地に派遣の青森県立中央病院DMAT、支援活動振り返る

公立穴水総合病院で救急患者の対応に当たる県病のDMATメンバー(県病提供)
石川県穴水町での活動を振り返る石澤医師(左から3人目)ら県病のDMATメンバー=11日午後、県病

 能登半島地震で大きな被害を受けている石川県穴水町へ派遣され、医療支援活動に当たった県立中央病院(青森市)の災害派遣医療チーム・DMAT(ディーマット)が11日、県病に帰着した。東奥日報などの取材に応じた救命救急センター長の石澤義也医師は、情報や医療資源が限られる中で「臨機応変に対応するしかなかった」と、現地の医療提供体制の厳しさを振り返った。避難生活での疲労、生活環境悪化からくる住民の健康への影響や、被災した病院の機能維持への懸念も示した。

 医師、看護師、業務調整員ら計6人の県病DMATは、6日に寄せられた派遣要請を受け、同日夜に県病を出発。7日に公立能登総合病院(七尾市)の拠点本部に到着し、8~10日は公立穴水総合病院(穴水町)で、他県のDMATとともに、救急外来や患者の転院搬送支援に当たった。

 病院では断水が続いている。穴水病院に関する事前情報が少ないまま現地へ向かい、到着してから初めて、できる検査が限定的だと知った。電話が通じないため、連絡がないまま救急患者がやって来る状況だった。発災直後から自宅との行き来が難しくなり、帰宅せず院内で睡眠を取っている医療スタッフもいた。

 救急患者は、避難所での発熱、食欲不振、下痢や嘔吐(おうと)を訴える患者がほとんどだったという。石澤医師は「避難所に限らず、感染症がまん延してきている。避難生活で体調を崩したり、もともとの疾患が悪化してさらなる治療が必要になる人も出てくるだろう」との見方を示す。建物も大きなダメージを受けているとみられ「ちょっとした(改修)工事だけで、病院機能を維持するのは難しいと思われる。能登半島の病院、老健施設に入っている患者や入所者を、全国で受け入れる必要が出てくるのでは」とも話す。

 病院の待合室では、避難してきた住民がソファで寝泊まりしている姿を見た。石澤医師は「避難所ではないのに、病院が避難所になってしまっていた。同じ災害が青森県で発生したらどうなるのかと考えざるを得ない。普段から、ある程度の期間籠城できる備えの必要性を感じた」と語った。

 県病を含め、青森県からは6病院31人のDMATが石川県に派遣された。

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