JATA髙橋会長「完全復活元年」、2024年新春会見でマーケット、課題、地震への対応語る

日本旅行業協会(JATA)は1月10日、新春記者会見を開き、髙橋広行会長がマーケットの動向を紹介するほか、旅行・観光業界が抱える課題や令和6年能登半島地震への対応を発表した。髙橋会長は2024年を「旅行業界の完全復活元年」と宣言。国内旅行や訪日旅行と比較して回復が遅れている海外旅行の復活に向けて力を尽くすほか、旅行業界の目指すツーリズムのあり方として高付加価値旅行の提供などビジネスモデルの変革に取り組む方針を示した。1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」に関しては、「現在は復旧段階にあり、復興段階では最大限努力する」と語った。また、旅行会社のコンプライアンス問題への対応では、現在進行している有識者委員会で3月までに具体策をまとめて即実行することを発表した。

JATA髙橋会長## 周年行事を生かして海外旅行復活へ

髙橋会長はマーケット動向として、2023年10月期には、2019年比で国内旅行が91.3%、訪日旅行が87.0%と約9割まで復活していることを紹介。一方で、海外旅行が55.6%と回復途上であり、全体で77.1%となるなど、海外旅行への課題感を述べた。

海外旅行の復活に向けては、周年行事を契機とした施策を展開する。「海外旅行自由化60周年」では、JATAとして共通ロゴやキャッチフレーズの公募や作成、告知を行いながら、双方向観光交流における「海外旅行の重要性」を業界メッセージとして発信する。「日米観光交流年」では、双方向観光交流の継続的拡大に向けた引き金となる施策やイベントを米国、日本で展開する。具体的には、姉妹都市交流を活用した観光交流を行うなど、日米両国でテーマを絞った交流事業を実施するほか、交流年のシンボルとなるスポーツをコンテンツとした観光イベントを開催する。このほか、追い風材料となる周年行事やイベントとして、「トルコとの外交関係樹立100周年」「パリオリンピック・パラリンピック」を挙げた。

急激に回復する訪日旅行では、高付加価値化や持続可能な観光の実現に向けた取り組みを推進する。高付加価値化旅行の質の向上に向けては、農泊事業者と日本のランドオペレータ―のマッチング事業を実施するほか、アドベンチャーツーリズムなどの新コンテンツを紹介。ソースマーケット、季節、地域分散によるオーバーツーリズム解消に向けた対応を行う。持続可能な観光の実現に向けては、ツアーオペレーター品質認証制度を通じたSDGsを推進。良質な旅を提供することで、訪日旅行客のリピーターを拡大する。

人手、生産性、休み方の3つの課題解消に着手

髙橋会長は旅行業界、観光業界で山積する①人手不足②観光DX・生産性の向上③休み方改革―の3つの課題に対応することを発表した。

人手不足への対応では、観光学習機会を拡大するほか、JATA合同インターンシップ、JATA旅行・観光業界就職セミナー、JATA旅行未来塾を開催する。観光学習機会の拡大に向けては、中学校や高校における学校学習において、観光学習の機会を増やすことで、日本の有力な成長産業、地方創生への切り札である観光産業への興味関心を喚起する。日本観光振興協会と連携して取り組みを拡大し、浸透を図る。JATA合同インターンシップは、旅行業界への就職を第一希望に考える大学3年生を対象に、旅行業界の最新事情や魅力を伝える。業界概要や就活に関するセミナーなどの講義と成果発表、会員各社における就業体験と併せ計6日間のプログラムを実施する。JATA旅行・観光業界就職セミナーは、旅行・観光業界に関心のある新卒学生を対象とした業界特化型セミナーを㈱ジャタと共同開催。2023年は25の会員企業が出展し、学生と会員のマッチングを行った。JATA旅行未来塾は、会員各社が人材に関して抱える課題解決へのきっかけ作りと社員のモチベーションアップを目的に、階層別研修として2022年度から実施している。2024年度は、管理職編を8月、中堅社員編を12月、若手社員編を2025年2月に開く予定。

観光DX・生産性向上では、12月1日から全機能の運用を開始した観光産業共通プラットフォームの浸透を図る。同プラットフォームを通じて、①宿泊施設と旅行会社間の非効率な情報連絡体制の改善による生産性向上および高付加価値業務への人的リソースシフト②デジタル基盤の活用による観光産業全体のDX化促進③災害時の正確な情報集約・発信による混乱回避および風評被害の最小化による被災地の早期復興―につなげる。現在は宿泊施設約5千軒、旅行会社83社がシステムを利用している。2023年度中に宿泊施設7千軒、旅行会社(自治体やDMOを含む)200社を想定している。

休み方改革では、平日分散に取り組む。2024年度には、国内旅行キャンペーンとして、平日需要の喚起を主目的に「混雑を避けて、ゆっくり、のんびり、平日に泊まろう!キャンペーン(仮)」を実施。時期分散、休日の取得促進などにより需要を平準化し、オーバーツーリズム解消や、混雑緩和による旅の満足度アップを目指して、平日旅行を推進する。抽選によるプレゼントも平日旅行参加者に限定し、次回の旅行に使える旅行クーポンが当たるという、シンプルな内容を予定している。

復旧段階で義援金、復興段階で観光を通じた支援策を展開

1月1日に発生した令和6年能登半島地震への対応については、過去の災害対応を参考にしながら、現地が混乱している復旧段階では、義援金の募集を行う。また、ボランティアを受け入れる余地がある場合は派遣を行う方針だ。復興段階に入れば、風評被害対策を行うほか、国・自治体の支援も通じた観光での支援策を考えていく。地震後における旅行者の状況については、1月3日までに現地から退去したことが報告された。宿泊施設への影響では、現在のところ、大きなキャンセルは発生していないことを明らかにした。

「旅 新しい価値への遭遇」

ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2024は、2年ぶりに東京・東京ビッグサイトで開催する。開催日は9月26~29日。会場内には大阪・関西万博の特設会場を設ける。半年後での開催を控える万博を盛り上げる。

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