「証拠残さず殺害するノウハウ蓄積」 共犯とされる元医師が証言 ALS嘱託殺人裁判

法廷で証言する山本被告(中央)とそれを聞く大久保被告(右)

 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う女性から依頼され、薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人などの罪に問われた医師の大久保愉一(よしかず)被告(45)の裁判員裁判の第2回公判が12日、京都地裁(川上宏裁判長)であった。共犯とされる元医師の山本直樹被告(46)=医師免許取り消し=が証人として出廷し、大久保被告について「(高齢者らを)証拠を残さず殺害するノウハウを蓄積していた」などと述べた。

 大久保被告は、山本被告らと共謀して2011年3月、山本被告の父靖さん=当時(77)=を殺害したとする殺人罪にも問われ、併せて審理されている。この日、山本被告は主に殺人罪について証言した。

 検察側の証人尋問で山本被告は、靖さんの殺害方法を記したメールが大久保被告から届き、「老人はさっさと死ねと思っている」「生きる屍(しかばね)をつくるようなことは絶対するな」などと伝えられたと言及。さらに事件前、大久保被告が「インチキな死亡診断書さえでっち上げればやりたい放題。すごいことを見つけた」と話していた、とも明かした。

 大久保被告はかねて「安楽死」や医療に紛れて殺害する方法に関心を持ち、マニュアルを作成するなどしていたとされる。検察側にこうした被告への印象を問われると、山本被告は「証拠を残さず殺人できる方法を蓄積し、共有することで、自分の理想とする世の中が実現すればいいと考える人だった」などと答えた。

 一連の公判で、両被告が顔を合わせるのは初めて。山本被告が証言する間、大久保被告は首をかしげたり、メモを取ったりしながら聞いていた。

 11日の初公判では、大久保被告は嘱託殺人罪について「女性の願いをかなえるために行った」と述べ、弁護側は自己決定権を保障した憲法に違反するとして無罪を主張。殺人罪は「やっていない」と起訴内容を否認していた。

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