「日東紅茶」中国・アジア市場開拓に本腰 三井農林が資本増強

三井農林は「日東紅茶」ブランドで中国・アジアを中心とした海外市場の開拓に本腰を入れる。

2023年12月8日取材に応じた三井農林の佐伯光則社長は、「2023年11月17日付で、親会社である三井物産を引受先とした第三者割当増資により150億円の資本増強を実施した。今回の増資は、これまで当社が嗜好飲料事業会社として蓄積してきた知見・技術の強みを活かし、国内既存事業強化と新規商品領域への参入、また中国を始めとするアジア市場への事業展開を意識して実行した。将来的には海外の売上比率を大きく伸ばしたい」と語る。

2022年1月、上海に三井農林(上海)飲料有限公司を開設し、中国華東エリア(上海市、江蘇省、浙江省)への本格進出の準備を進めている。

取材に応じた三井農林の佐伯光則社長

中国では、機能性食品や「日東紅茶ミルクとけだすティーバッグ」などのオンリーワン商品、コロナ前のインバウンド需要の高まりで爆買いされるなど強い引き合いのあった「日東紅茶ロイヤルミルクティー」に勝算を見込む。

「新しい市場には、圧倒的にコスト優位性がある商品か、他ではつくれないオンリーワンの商品が攻め筋」との考えがベースになっている。

「『ロイヤルミルクティー』はかつての本邦での爆買いで商品認知は進んでおり、過去に中国で実施された“知っている紅茶商品”の調査でも上位に入っていた。」という。

中国以外の市場も狙う。

台湾では、2022年から「日東紅茶」商品を販売。カゴメの海外関連会社の協力を得て、台湾の大手コンビニなどで売られている。

オーストラリアへの輸出も開始し今後は中東への輸出を検討していく。

商品開発はウェルビーイング領域に注力しファンとの共創型商品にも挑む。

ウェルビーイングとは身体的にも精神的にも社会的にも健康で幸福な状態を意味する。

「ウェルビーイング商品については『とけだす』シリーズからカフェラテや粉末果汁入りティーバッグを展開、飲料では植物性ミルクを発売するなど領域を拡大していく。共創型商品は、ファンベースマーケティングを中心に据えてプロダクトアウトではなくマーケットインの発想で“こういうのが飲みたい”というお客様のニーズに応えていきたい」との考えを明らかにする。

ファンベースマーケティングの考えの下、自社EC事業も強化していく。これによって消費者との直接の接点を設け、マーケットインの戦略実行を加速していく考えだ。

三井農林の業績は回復傾向にある。

コロナ禍で打撃を受けた業務用が上向いてきたからだ。近未来ではコロナ前の水準を目指すが、将来的には海外を中心に大きく伸長させることを意識していく。

「会社として売上や利益の目標もあるが、紅茶を中心としたお茶のマーケットの伸びは鈍化しており、紅茶のリーディングカンパニーとしてはそちらも伸ばしていきたい。海外では日本発祥の紅茶ブランドとして”日本”もアピールしていく」と述べる。

「アジアを中心としたグローバルで事業展開するにあたり、我々として何をすべきかをもう一度見つめ直す。お客様に喜んでいただき、売上と利益がしっかり上がり、SDGsにも配慮した事業モデルが何なのかを社員を中心にボトムアップで考えていきたい」と意欲をのぞかせる。

© 株式会社食品新聞社