〈1.1大震災~連載ルポ〉和倉、源泉を旅館に送れず 配管破損「存続の危機」

地震の影響で温泉が出ない状況が続いている七尾市の和倉温泉総湯=12日午前11時20分

 地震による建物損壊などで旅館が休業に追い込まれた七尾市和倉温泉。12日、顔見知りの経営者の男性を訪ねると、あきらめ顔でこう言った。「これは当分、営業再開は難しいだろうな」。聞くと、各旅館に源泉を引く配管の破損が判明したという。一難去ってまた一難。石川を代表する「湯の町」に地震が暗い影を落とし続けている。

 弁天崎公園と旅館「加賀屋」前にある4つの源泉は不通となり、総湯から各旅館への供給もできなくなった。断水も長期化を避けられない。ひび割れた道、観光客が消えた通り。取材をすれば、地元住民や旅館関係者の誰もが「和倉存続の危機」と口にする。

 窮状の中、被災者を受け入れる旅館もある。「はまづる」は、従業員寮を被災者に提供している。旅館自体は、浴室の窓ガラスが割れ、鉄骨むきだしの無残な姿になった。むなしさは募るが、人命を助けるという最高の「おもてなし」の心は忘れない。それでも、将来を考えれば不安ばかりだ。高城勉代表(76)は「配管が修繕できたとしてもボイラーの点検などが必要。再開がいつになるか分からない」と肩を落とした。

 3月16日に北陸新幹線の県内全線開通を控える。今年は七尾を主会場に日中韓の都市交流事業「東アジア文化都市」という大イベントが予定され、和倉温泉が主な宿泊場所となっている。だが、今月から予定された音楽祭や異文化交流などのプレ事業は中止となり、今後の予定も白紙だ。

 市スポーツ・文化課の担当者は「避難支援やインフラ整備が最優先。どうなるのかこっちが教えてほしい」とため息を漏らした。冷え切った和倉に湯けむりが戻る日はいつになるのか。(七尾支社長・安田佳史)

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