「マスクはさせないでほしかった…」 コロナ禍の学校で体育の授業中に児童が死亡 11歳の息子を失った父親の思い【大石が聞く】

「5分間走という小学校の体育の授業で走っているうちに、最後の4週目くらいで急に倒れた」

こう話すのは、大阪府内に住む男性。

コロナ禍真っ只中の2021年2月、小学5年生だった息子(当時11歳)を亡くしました。

原因は新型コロナではなく、心不全。学校の体育の授業中に起きたある異変が元でした。

(男性)
「日頃はむしろ、ものすごくたくさん走っていて、山の坂を走って上ったり下りたりというのを毎日のようにやって遊んでいた子なので、それが急にそういうふうになるのも変な話だなと思っていて」

その日の授業は5分間の持久走。

1周150メートルの校庭を4周、600メートルを走ったあたりで倒れたといいます。

搬送先の病院で亡くなった息子。
父親は、倒れた原因に“ある物”が関わっていたと考えています。

(男性)
「私は何かしらのきっかけになったんじゃないかと思います」

「マスクが呼吸困難につながったのでは」

(大石アンカーマン)
「マスクを着けていたことが?」

(男性)
「はい」

コロナ禍で着けることが当たり前とされていたマスク。父親は、息子が走っている最中もマスクを着けていて、それが呼吸困難につながったのではないかと考えています。

これは、少年の死亡後、学校が行った事故調査の報告書。

保健室に運ばれたとき少年のマスクはあごにかかった状態でしたが、調査に対し、当時の状況を覚えていた児童の半分が、少年は走っている間もマスクを着けていたと回答。
一緒に走っていた児童は、倒れた少年にマスクを外すよう言ったと答えています。

国は当時、体育の授業でもマスクをつけることについて、「着用の必要はない」とする一方、「児童生徒が希望する場合は着用を否定しない」というガイドラインを出し、学校側もそれにのっとって「マスクは外しても着けても良い」という指導をしていたといいます。

(男性)
「同調圧力のような。みんなが着けていれば、外していいと言っても着けるんだろうな と」

父親は体育の授業であれば、全員強制的に外させるべきだったのではないかと、指導のあり方に疑問を抱いています。

(男性)
「走らせるのであれば、先生から(マスクは)強制的に「取りなさい」と。
「『外してもいいよ』というような言い方だと、子どもたちは、着けても大丈夫だと思ってしまうわけですよね」

マスクを着けたまま運動すると、体にどのような影響が出るのか…

マスクを着けて持久走を走るとどうなる

(大石アンカーマン)
「岐阜大学にやって来ました。春日先生よろしくお願いします」

子供の運動を研究している岐阜大学教育学部の春日晃章教授。

学生に協力してもらい、マスクをつけて持久走をする実験をしました。使うのは亡くなった男の子が着けていたものと、材質がほぼ同じマスクです。

(岐阜大学 教育学部 春日晃章教授)
「血中酸素飽和度(血液中の酸素濃度)が98、心拍数が60~62。これがちょうど安静時」

(岐阜大学 教育学部 春日晃章教授)
「行きましょう、頑張って。用意、はい!」

マスクを着ける人着けない人に分かれ、グラウンド3周1200メートルを走ります。
呼吸のたびにマスクが顔に張り付き、息がしづらい状態が続きます。

(大石アンカーマン)
(走り終えて)「はー、しんどい…」

大石アナ「思ったように息を体に送り込めない」

走り終えた直後の心拍数と血中酸素飽和度を測ってみると…
「大石さん(血中酸素飽和度)86」

(大石アンカーマン)
「思ったように息を体に送り込めない。マスクがあるから。苦しかった」

平常時の血中酸素飽和度が98だったのに比べ、走った後は86まで低下。かなりの酸素不足になっています。

学生5人の数値を見ると、マスクをつけて走った3人の方が血中酸素飽和度の低下がはっきり表れています。

心拍数もマスク組の方が高くなっています。

(岐阜大学 教育学部 春日晃章教授)
「やはりこう見ると、マスク組はペースにもよるので一概には言えないが、走った直後の血中酸素飽和度は若干低めに出ます」

マスクをつけて走っていた学生は…

(学生)
「普段走るときよりも(マスクを着けていると)呼吸が荒くなる。荒くなると、よりマスクが口にくっついて悪循環。回復にも時間がかかると思った」

(岐阜大学 教育学部 春日晃章教授)
「大人だと筋力も強いし呼吸するための筋も強いので、マスクをしたとしても強引に酸素を吸入することはできるんですが、子供だと筋力的にも弱いので、より酸欠になりやすいということは考えられる」

息子を亡くした男性は「安全な教育を」

(息子を亡くした大阪府の男性)
「すごい元気で、ゲームがとても好きで。自分でYouTubeの動画を作ったり…」

持久走の授業中に倒れ、心不全で亡くなった大阪府の少年(当時小5)。
果たしてマスクをつけて走ったことで酸欠になり、それが心不全に繋がったのか…。

学校側は事故調査で、マスクを着けたまま走ったかどうか、それが原因で体調を崩したのかどうかは不明で、学校側の指導に落ち度はなかったと結論づけています。

思いもよらなかった学校での息子の死。

父親は今も釈然としない思いを抱き続けています。

(男性)
「学校教育というのは、親のわれわれは学校の世界になにも口出しできない。だから親がどうしても確認ができない部分は、しっかりリスクやカリキュラムを考えて、子どもたちに安全な教育をしてほしい」

2024年1月10日放送 CBCテレビ「チャント!」より

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