担任の停職処分取り消し 茨城・取手中3自殺 水戸地裁で判決

水戸地裁=水戸市大町1丁目

2015年に茨城県取手市立中学3年の女子生徒=当時(15)=がいじめを受け自殺した問題を巡り、茨城県教委から停職1カ月の懲戒処分を受けた当時担任の女性教諭が、県を相手に処分の取り消しを求めた訴訟の判決が12日、水戸地裁であった。三上乃理子裁判長は、「地方公務員法の懲戒事由を欠くものであり、違法な処分」として、女性の訴えを認め、県に処分の取り消しを命じた。

判決によると、15年11月、原告の教諭が担任をしていた生徒が自殺。県の調査委員会は19年3月、生徒に対するいじめと自殺との因果関係を認めた上で、教諭の言動が「いじめを誘発し、助長した」などとする報告書を提出。県教委は同7月、教諭が適切な対応を怠りいじめを認知できなかった▽生徒指導などにおける生徒への言動でいじめを誘発、助長した▽自殺を図った日に、引き金となる不適切な指導をした-ことなどを理由に、地方公務員法の規定に基づき、教諭を停職1カ月の懲戒処分とした。

裁判では、自殺した生徒への進路指導や「きらーい」などと書き込まれた個別アルバムへの対応など6項目で、教諭に非違行為があったかや懲戒事由に該当するかが争われた。

判決では、県側が教諭の非違行為として挙げる発言の一部について、「調査委員会がいかなる資料を根拠に認定したかが明らかでなく、その記載を裏付ける証拠はない」と指摘。学校評価アンケートで、「いじめなどを心配しないで安心して生活している」という質問項目に、本件生徒でない生徒が「あまりそう思わない」「そう思わない」と回答したことにも触れ、「その生徒に個別に事情を聴取しなかったことが、本件生徒に対するいじめを助長、誘発し、または、いじめの関係性を固定化したとは認められない」とした。

教諭は取材に「訴えが認められてほっとしている。改めて亡くなった生徒のご冥福をお祈りします」と書面で回答。森作宜民県教育長は「判決文を詳細に確認の上、対応を検討する」とコメントした。

■星野豊・筑波大教授(法律学)の話

裁判所は、処分の理由とされた各事実はいずれも担任の非違行為と評価されるべきものではなく、処分すべきでない教員の行為を処分対象とした県を厳しく指弾したものである。本件に限らず、全体の雰囲気や根拠のない臆測によって誰かが不利益を受けることは、絶対にあってはならない。人事を管掌する者全員が、改めて肝に銘ずべき事件であると考えられる。

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