ローブのギャンブルが大成功、48時間ステージを制し総合3番手に浮上。首位はサインツ【ダカールラリー】

 中東のサウジアラビアで開催されている『第46回ダカールラリー2024』は、1月11~12日にかけてマラソンステージの“ステージ6”が行われ、バーレーン・レイド・エクストリームのセバスチャン・ローブ(プロドライブ・ハンター)が今大会2度目のステージウインを飾った。

 既報のとおり、この2024年大会で初めて行われた“48時間クロノ”では、ステージ5を終えた段階で総合トップに立っていたヤジード・アル・ラジ(トヨタ・ハイラックス・プロドライブ)がクラッシュを喫しデイリタイア。自身初の総合優勝が絶望的になった。

 代わって総合首位に浮上したカルロス・サインツSr.(アウディRS Q e-tron E2)を含めた選手たちは、前日にステージ途中に設けられた計7箇所の宿泊地で一夜を過ごした後、12日(金)の8時から走行を再開し、各々がスタート地点となったシュバイタのフィニッシュポイントを目指してビバークを出発した。

■セバスチャン・ローブ、増岡弘に並ぶ

 二日間かけて758km、その内の549kmで争われた同ステージの後半戦では、前夜にステージ3番手相当のタイムを記録していたローブが7時間21分56秒でトップフィニッシュ。ダカール通算25度目のステージウインをマークし増岡浩が持つ記録に並んだ。前夜に暫定トップタイムをマークしていたサインツSr.はステージ終盤にローブに逆転を許し2番手でのフィニッシュに。しかし総合では競技2日目以来のトップに再浮上している。

 総合2番手は、この48時間クロノステージを3番手タイムで駆け抜けたマティアス・エクストローム(アウディRS Q e-tron E2)で、チーム・アウディスポーツの大先輩とのギャップは20分21秒となっている。ローブが駆るハンターが2台のアウディに続き総合3番手。順位を6つ上げたフランス人ドライバーは、ステージ5でわざと15分のペナルティを受け翌日の出走順を後方にすることで長丁場のステージでタイムを稼ぐことを狙った“ギャンブル”を見事に成功させたことになる。

「砂丘で良い二日間を過ごした後、困難な48時間クロノステージで勝てたのは素晴らしい。エンプティ・クォーターでの550kmはマシンにとって非常にハードなものだとわかっていたので、初日は少し楽なペースで走り、何も壊さないようにした」と振り返ったローブ。

「全体的には戦略を練ることができたのは良かったけれど、他の人たちが別の方法でタイムを稼いでいるのを見ると、僕たちは少しやりすぎたのかもしれない。でもOKだ。僕たちはまだゲームの中にいるしトップから30分以内に入ることが最大の目標だった。まだまだ先は長いしね」

クラッシュによりクルマを壊してしまったヤジード・アル・ラジ(トヨタ・ダカール・ハイラックス)とその脇を通過するセバスチャン・ローブ(プロドライブ・ハンター) ダカールラリー2024
「48時間クロノに賭けている」と語っていたセバスタチャン・ローブは9番手から3番手に急浮上した
ふたたび総合首位に立った61歳のカルロス・サインツSr.(アウディRS Q e-tron E2) ダカールラリー2024
マラソンステージではクルー自身が翌日の走行に備えてマシンを修理・整備する。写真はナニ・ロマ(フォード・レンジャーT1+)の作業の様子

■アル-アティヤにアクシデント発生

 サインツから約30分遅れているローブからさらに30分ほど後方の総合4番手には、TOYOTA GAZOO Racingのルーカス・モラエス(トヨタGRダカールハイラックス・エボT1U)がつけた。僅差の5番手はオーバードライブ・レーシングから出場しているギヨーム・ド・メビウス(トヨタ・ハイラックス・オーバードライブ)だ。

 一方、ステージ5を制し48時間クロノを先頭からスタートしたナッサー・アル-アティヤ(プロドライブ・ハンター)は、想定されたタイムロスに加えて530km地点でストップしてしまう。ステアリングアームの損傷に見舞われた“2連覇王者”はデイリタイアこそ免れたものの、このアクシデントにより2時間40分以上の遅れを取り、大会3連覇の実現が非常に困難な状態となっている。

 日本勢は“ストック”と呼ばれる四輪市販車部門に参戦している三浦昂(トヨタ・ランドクルーザーGRスポーツ)が難所を突破した一方、チームランドクルーザー・トヨタオートボデーの僚友ロナルド・バソ(トヨタ・ランドクルーザーGRスポーツ)は、規定時間内にフィニッシュにたどり着くことができていない。また、トラック部門で日野600シリーズを駆る日野チームスガワラの菅原照仁も同様で、無事にフィニッシュした本隊とは別ルートで休息地のリヤドに向かっている。

 二輪部門ではモンスターエナジー・ホンダ・チームのエイドリアン・ファン・ベベレン(ホンダCRF450ラリー)が、7時間57秒29秒というタイムで626kmの長丁場を駆け抜け、今大会最初のステージウインを達成。総合順位も4番手から3番手に上げてみせた。

 ファン・ベベレンのステージタイムから4分13秒遅れの2番手にトビー・プライス(KTM450ラリー・ファクトリー)が続き、リッキー・ブラベック(ホンダCRF450ラリー)が3番手に。ステージ6を総合首位で迎えたロス・ブランチ(ヒーロー450ラリー)は、ブラベックに51秒差で逆転を許し総合2番手に順位を落としている。総合でもワン・スリーとなったホンダ勢のタイム差は9分21秒だ。

 ダカールラリー2024の9日目は首都リヤドでのレストデー。つかの間の休息をとった選手たちは14日のステージ7からラリーの後半戦を戦っていくことになる。

サインツSr.に次ぐ総合2番手につけるマティアス・エクストローム(アウディRS Q e-tron E2) ダカールラリー2024
ステアリングアームの破断により530km地点でストップしたナッサー・アル-アティヤ(プロドライブ・ハンター) ダカールラリー2024
総合4番手につけているルーカス・モラエス(トヨタGRダカールハイラックス・エボT1U) ダカールラリー2024

© 株式会社三栄