能登半島地震や、日本航空と海上保安庁の航空機衝突・炎上事故で、重苦しいスタートとなった2024年。尊い命が事故などで奪われる事案は、沖縄県内でも相次ぎました。
その一つが、1月6日夕方に浦添市宮城の国道58号で起きた交通事故です。ネパールから来沖していた62歳の男性と56歳の妻が、81歳の女性ドライバーの車にはねられ亡くなりました。
沖縄で暮らす息子夫妻や、生まれたばかりの孫に会いに来ていたとのこと。幸せの絶頂から悲嘆のどん底に突き落とされたであろう関係者を思うと、胸が締め付けられます。
現場は第一通行帯に仮設された歩道。事故から5日目となる10日も、片側4車線の広い道路の傍らに2人を悼む花束や飲み物が添えられ、惨事の痕跡を伝えていました。
周辺は、あちこちで道路の拡幅や歩道橋の設置工事などが進められています。毎日、マイカー通勤でこの道を利用する同僚によると、工事の影響でしばしば車線が減り通行が制限されるため、分かりづらく戸惑うことがあるそう。
近隣の店で働く50代女性に話を聞くと「びゅんびゅん飛ばす車もあるし、この辺はいつ事故が起きてもおかしくないと思う。工事期間が長すぎるのもどうにかしてほしい」と顔をしかめていました。
なぜ事故が起きたのか。防ぐ手立てはなかったのか。道路の構造上の問題やドライバーの年齢的な要素もあったのであれば、事故は決して人ごとではないはず。本紙社会部の警察担当記者が、継続して取材を進めています。近く出す予定の検証記事も、合わせてぜひお読みください。
炊き出しの列から漏れたSOS
続いて紹介するコンテンツは、年末年始に那覇市の与儀公園などで行われた炊き出しのルポ。ホームレスや生活困窮者が12月31日から1月2日までの3日間で、延べ680人訪れました。温暖な沖縄とはいえ、冬場の朝夕は冷え込みます。日雇いなどの働き口が減り、行政機関も休みとなる年末年始。新型コロナウイルス禍や2022年上旬から続く物価高も追い打ちをかけ、記事には明日をも描けないSOSの声が並んでいます。
帝国データバンクが2023年11月末に発表した、食品主要メーカー195社の調査によると、約2年にわたる大規模な値上げラッシュは24年春までおおむね収束傾向で推移する見込みです。その一方、円安の長期化や原油高を背景にした資材費の高騰で、春以降も断続的な値上げが起きる可能性があるとの予測。家計に重い負担がのしかかる中、自助努力ではどうにもならない世帯をすくい上げる、公的サポートの充実が求められています。
「天職」を辞して選んだ道は
最後は、あらゆる性別の人が恋愛対象になる「パンセクシュアル」であることを公表した岸本哉子(かなこ)さん(44)にスポットを当てた記事です。「天職」だったはずの警察官を辞め、オーダースーツの出張採寸専門店を立ち上げるに至った思いとは。
かつての岸本さんのように、自分を押し殺して生活している性的少数者は少なくなく、差別や偏見のない社会の実現には程遠い現実が横たわっています。岸本さんの姿が多くの人の背中を押し、少しでも生きづらさの解消につながればと願っています。
今回の「デジ編チョイス」はこの辺で。デジタル編集部の新垣綾子がお届けしました。