強力助っ人「潜在看護師」受け入れ、人出不足改善/大間病院(青森県大間町)

吉田総看護師長(右から2人目)と業務の打ち合わせをする八木澤さん(同3人目)と成田さん(右)=10日、大間病院
大間病院は今後も潜在看護師の受け入れを継続し、看護師不足の解消を目指す=10日

 青森県大間町の大間病院が、資格を持ちながら離職中の「潜在看護師」を短期就労で受け入れている。八木澤真理子さん(61)=青森市出身=は昨年10月から、成田久美子さん(59)=同=は9日から看護業務に当たっている。期間はそれぞれ3カ月間。2人は「へき地の医療現場は大変。自分たちの経験が少しでも力になれば」と話している。

 大間病院は内科、外科、小児科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、リハビリテーション科からなる。大間町から下北地域の中核病院であるむつ総合病院までは1時間以上、青森市までは約3時間かかるため、同町、風間浦村、佐井村の住民にとっては、生活に欠かせない病院だ。

 3町村には高齢者が多く基礎疾患に加えて認知症の患者も少なくない。診療科ごとの専従看護師はおらず、在籍する33人の看護師全員で全科の診療を支える。看護師は足りておらず、八木澤さんと成田さんが加わることで、一般病床48床に対する看護師数がようやく充足するという。

 外来患者の業務のほか、一晩中休まず入院患者の夜間対応に追われることも。患者の介護も担うため看護師の負担は大きいという。こうした事情もあり、「看護師一人一人のスキルアップを図りたいが、外部の各研修会に参加させる余裕はない」と、総看護師長の吉田美穂子さん(56)は率直に語る。

 八木澤さんは関東圏の医療機関に従事し、10年前から派遣看護師として働いてきた。60歳を機に地元の青森に戻った際、大間病院の募集を知った。院内では10月下旬から看護と介護の業務を並行して担当。「看護師は患者のことを家族のように知って接している。事務職員らも全員が患者を気にかけていて、地域に欠かせない病院だと強く感じた」と話した。

 総合病院などで勤務してきた成田さんも、経験を生かしたいと意気込む。「各科の知識や情報を覚えないといけないので大変だが、自分から積極的に連携を取り、3カ月間病院の力になりたい」と語った。

 吉田総看護師長は潜在看護師の受け入れを通じて、在籍している看護師の成長にもつながると強調する。2人の加入で他の看護師の休みが増えた。さらに時間外労働が減るなど、労働環境が改善しているとし「潜在看護師は必ず新しい風を吹き込んでくれる。今後も積極的に受け入れていきたい」とした。

「看護職確保」 県協会が初実施

 大間病院の潜在看護師受け入れは、日本看護協会が2017年度から始めた「地域に必要な看護職確保推進事業」の一環。県看護協会が本年度、同事業に取り組み、初めて募集した。来年度以降は、大間病院と潜在看護師のマッチングをサポートしながら、下北圏域以外の医療機関に対する、看護師不足の実態調査の実施を検討する。

 大間病院は20年ごろから、医療支援活動を展開するNPO法人「ジャパンハート」の看護師派遣を受け入れてきた。潜在看護師のマッチングに当たり、県看護協会はこうした実績を考慮した。都市部への移動に時間がかかるへき地である点も踏まえた。

 大間病院は研修医などに利用してもらう病院近くの宿舎を2人に貸し出している。「必要な家具などはそろっていて、すぐ生活できた」と八木澤真理子さん。病院は今後も同事業とNPO法人の双方から派遣を受ける方針だ。

 県看護協会の前田隆子常務理事は「まずは下北圏域で受け入れを継続し看護師不足の解消を目指したい。将来的には、潜在看護師が青森で働くことを選んでくれるような充実した環境を整備できたら」と話した。

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