約500人が集まった今年の兵庫県丹波市の「二十歳のつどい」。華やかに着飾った若者たちの中で例年以上に目に留まったのが、顔にメークを施した男性たちだった。運営側の市職員らも同意見らしく、「ここ1、2年で増えた」「今年は多い」と口にする。雰囲気はさながらK-POPアイドル。「きっかけは?」「やって良かったことは?」。普段からメークをしているという3人(いずれも仮名)に会場で尋ねた。(那谷享平)
「始めたのは高2くらい。眉毛が薄いのがコンプレックスで。それを隠そうと描きだしたら、とまらんくなった」とタクミさんは言う。確かにきりっとした眉が印象的だ。目元のメークもばっちり。「ラメ入りのアイシャドーもしています」。そう言って、グレーのマニキュアをした指で示した。
一緒にいたヒロトさん、カケルさんの2人も高校生でメークにはまった。肌のケアが入り口だったという。「僕はニキビがひどくて、それで」とヒロトさん。薄く口紅を差しているが、それほど女性っぽさを出しているわけではない。
ひときわ長身のカケルさんは「男性ってごつごつした肌をしているじゃないですか。もてるために清潔感のある肌にしたくて。最初は化粧水で、それからBBクリーム、ファンデーションと進んでいった」と振り返る。今日のメークのテーマは「外国人風」。最近染めた金髪に合わせ、目元の彫りが少し深く見えるようにしているそうだ。
3人とも必要な知識や技は、動画投稿アプリで学んだ。手本にしているのは、人気K-POPグループの男性アイドルなど。「TikTok(ティックトック)やユーチューブで、『BTS風』とかのワードでメーク動画を検索するんです。女の子向けの動画も参考にしますよ」。ヒロトさんが教えてくれた。
メークをして良かったことは? 「鏡を見るのが楽しくなる。メークがうまくなると、『最高の自分』が更新されていく感じ。自己肯定感が上がって、すっぴんの自分も好きになった」とタクミさん。美容師として働いており、「いつか男性のお客さんにも店でメークをやってあげられるようになったらいいと思う」。
カケルさんも「自信を持って他人と話せる。これが一番」と力強い口調で付け加えた。その言葉通り、突然の取材にも物おじせず、落ち着いて受け答えをしている。きっかけはコンプレックスだったメークも、今は自信の源。「じゃあ、式典が始まるので」と、去り際もはきはきとしていた。