藤田愛、大向美智子、府川唯未がアルシオンで限定復帰 浜田文子の電撃登場は本当にサプライズだった

元プロレスラーの藤田愛、大向美智子が12日、女子プロレス団体アルシオンの復活興行「ARSION THE FINAL ~卒業~」(新宿FACE)で府川唯未とともに限定復帰を果たした。

3人はタッグを組み、AKINO & Leon&山縣優組と激突。藤田は側転式ボディアタックや飛びつき式フランケンシュタイナーなど身軽さを見せ、大向は髪をつかんで投げ捨てるなど荒々しいファイトを展開、府川はバトラーツへの出稽古で現在の夫・田中稔から習得した関節技を次々と仕掛けた。10分時間切れドローも、それぞれが現役時代の持ち味を披露した。

同団体は全日本女子プロレスの分裂騒動を機に、現スターダム・エグゼクティブプロデューサーのロッシー小川氏が1998年2月に設立。資金繰りの悪化により2003年6月22日の後楽園大会で堀田祐美子率いる「Z-SPIRITS」に敗北を喫し、同24日に堀田が立ち上げた新団体「AtoZ」に所属選手が吸収される形で活動を休止した。創立25年が過ぎる寸前、府川が中心となって一夜限りの大会が立ち上がった。

藤田は岐阜在住で3人の娘を育てる主婦。大向は山口在住で1男1女の母、周南市の毛利道場でプロレス教室を開き、愛媛プロレスの大会に悪役マネジャーとして登場するなどプロレスとの関係を続けている。タレント活動も行う府川は娘2人を育て、長女でプロレスラーとなった田中きずなはセコンドに就いていた。

04年に引退した藤田は昨年9月にオファーを受け、ランニングから体を動かし、翌月にリングでの受け身を開始。アルシオン時代の「ガングロ天使」キャラをつくるため20年ぶりに日焼けサロンに2度通った。「同じお店なのに個室になっていた。昔の感覚で入ったら痛くて、治まったら次はかゆくなった。一番大変だったのは日サロかも。試合中は勝手に体が動きました。間違いなく楽しいし気持ち良かった」と笑顔で語った。

アルシオンの活動休止後はフリーに転身した。「悔いなく引退したはずなんですけど。今日で一区切り。アルシオンでなかったら絶対に上がっていない。またこれまでの暮らしに戻ります」と感慨深げに話した。高校2年、中学2年、小学2年の娘たち。プロレスラーへの夢を明かされているといい「応援したい気持ち、やめとこうかという気持ちが半分。でもこればっかりは親が決められないので」と複雑な胸中を明かした。

07年に引退した大向はアルシオン時代、ライオネス飛鳥を破りクイーン・オブ・アルシオン王座に就き、団体トップに立ったが、活動休止とともにフリーに転身した。この日は大会の締めとして小川氏から卒業証書が渡され、そこには「私の最高の作品だった」と添え書きされていたといい、時折涙声で「最高のライバル、シチュエーションで大きな舞台をもらい、憧れたライオネス飛鳥さんと戦えた。アルシオンがあったからこそ、フリーになっても生かされた」と感謝した。現在もプロレスに関わっているだけに「リングの似合う女でいたい」と前を向いた。中3の娘、中2の息子が見守る前で精いっぱい戦った。

試合中の頭部負傷が原因で01年に引退した府川は、昨年デビューした娘の田中きずながセコンドについた。試合後は母子で抱き合い感激をともにした。「お母さんがやり残したことは全て私がやる」と目標を掲げる娘からは、リングイン時にロープを上げられた。「私の娘ではなく、きずな選手がロープを上げてくれました」と感慨に浸った。

メイン終了後には、グラン浜田の娘でプロレスラーの浜田文子が電撃登場した。小川氏が来場した選手、OGに卒業証書を渡し終えたところで、観客の男性から「もう一人います!」と声が上がると、傍らに浜田にがいた。会場から拍手と「お帰り」の声が起こりリングイン。「文子」コールの中でマイクを持ち「今日は試合に出られなくて、すみませんでした。どうしても(卒業式に)いたかったので、来ちゃいました。すみません。皆さん本当に申し訳ございませんでした。これからも、浜田文子をよろしくお願いします」と頭を下げた。

浜田はアルシオンで活躍し、以降もトップ戦線に立ち続けたが18年5月に覚醒剤取締法違反(使用および所持)の容疑で逮捕され、懲役1年6月(執行猶予3年)の有罪判決を受け、日本から離れた。この日は大会中にビデオメッセージで出演し、メキシコで浜田道場を立ち上げ、現役選手として新人の育成を行っている近況を報告。涙ながらにアルシオンへの感謝を口にした。

まさにサプライズだったようで、府川は「本当に知らなくてビックリしました。ビデオメッセージがギリギリで届いて良かったと思っていたのに」と話した。小川氏も驚いたといい、ある浜田の支援者が独自に調整したのだと、大会終了後に確認したという。小川氏は「文子が来てくれて良かった。いなかったら卒業でも一枚足りなかった」としみじみ語り、「スターダムはアルシオンがなし得なかったことをつないでいる。基本はアルシオンであり、その前の全女だったのかもしれない」と、歴史の重みをかみしめていた。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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