患者と研究テーマ設定・論文も共著、希少疾患領域で協働の場を大阪大学が構築

大阪大学大学院医学系研究科の研究グループは、患者と研究者の熟議を通して、「希少疾患患者が直面する困難の全体像」と「希少疾患領域で優先すべき研究テーマ」を明らかにした。

近年、政策立案におけるステークホルダー(当事者)の関与が医学・医療の分野で注目されているが、実践的な方法論の確立は不十分だった。特に、稀少疾患領域では、一部の、個々の患者会による陳情型で意見を伝えることに留まっており、希少疾患領域の政策に客観的な形で患者の声を反映させることが課題となっていた。

研究グループは患者の視点を反映した政策形成のためのエビデンス創出と、ステークホルダー間の協働の方法の開発を目的としてコモンズプロジェクトを開始した。これにより、10疾患の希少疾患の患者・患者家族、研究者、行政経験者が参加し、ワークショップを通して継続的に熟議を行う「エビデンス創出コモンズ」という名の「場」が構築された。患者・患者家族も共に研究を進める立場として参画し、議論の進め方や結果のまとめ方を共に検討し、患者著者として論文も共同執筆した。

まず、「コモンズ」での熟議の結果、希少疾患患者やその家族が直面する困難について整理して提示できた。さらに、そのような困難に対して取り組むべき研究テーマの優先順位についても議論した。その結果、「日常生活への支障」「経済的負担」「不安」「通院の負担」など、7つの研究テーマが抽出された。

今回の成果は、希少疾患領域の政策形成の際に参照可能なエビデンスとして役立つと考えられる。また、本手法は政策形成の過程にステークホルダーが関与する方法として今後の応用が期待されるとしている。

論文情報:

【Research Involvement and Engagement】Enhancing evidence-informed policymaking in medicine and healthcare: stakeholder involvement in the Commons Project for rare diseases in Japan

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