芸術鑑賞に「正解も間違いもない」 子どもたちの対話と考える力養う 沖縄県立博物館・美術館

李栄淑さん(奥)と紅型作品を鑑賞する子どもたち=12月23日、那覇市の県立博物館・美術館

 【那覇】芸術作品を見て自由な感想を語り合う対話型鑑賞の取り組みが12月23日、那覇市の県立博物館・美術館であった。照屋勇賢さんの企画展「オキナワ・ヘヴィー・ポップ」の会場で、学童クラブの子ども10人が一つの紅型作品に向き合った。(編集委員・阿部岳)

 「アートマインドコーチング」のコーチ資格を持つ「聴色 YURUSHI IRO」の李栄淑(リヨンスク)さんは初めに「この場では正解も間違いもない」と伝えた。紅型作品の題名「遙(はる)か遠くからのパレード」も知らせず、予備知識のない状態で想像力を働かせてもらった。

 市内のアカンミキッズクラブ、ハゲーラキッズクラブの二つの学童クラブの子どもたちは紅型の柄を見て、「ギターやってる」「三線じゃない?」「動物と鳥の鳴き声が聞こえる」。琉球王朝時代と現代の登場人物が入り交じる様子に、「時空をさかのぼっているんじゃないか」という意見も出た。

 金城小1年の平良羽寿喜(はずき)さんは、友達の意見に「確かに」と相づちを打ちながら紅型を眺めて楽しんだ。「いろんな動物がいる。どうやって描いたのかな」

 2学童クラブを運営する一般社団法人マッタラーの親川志奈子代表は「子どもたちは普段、言いっ放しのことも多いが、今日は人の話を聞いて感じ取っていた。コミュニケーションの学びになったと思う」と振り返った。

 シンプルな問いかけで子どもたちの思いを引き出した李さんは「自分の考えを言っていいんだという自己肯定感と、正解のない問いを自分の頭で考える思考力を育みたい」と語った。

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