〈1.1大震災~アスリートからエール〉「自分の街とは思えず」 楽天・松井友飛投手

  ●穴水の実家で被災「必死に頑張る」

 プロ野球・楽天の松井友飛(ともたか)投手(24)は穴水町で生まれ育った。ふるさと思いの右腕は、いつものように実家で新年を迎えた。大地震の発生は1日の午後4時過ぎ。初詣から帰ってのんびり過ごしていた時だった。

 経験したことのない揺れに家族だんらんの光景は一変した。「1秒がすごく長く感じた」。揺れが落ち着いて玄関から外へ飛び出した。家は持ちこたえたが、停電が続き、あちこちで道が割れていた。スマホで情報を探ると「震度7」の文字。「これはやばいと思った」。

 穴水の最大震度は6強。実家は食器が割れる程度で、親族も無事だった。だが、いくつもの家が倒壊していた。「自分の住んでいた街とは思えなかった」。眼前に広がる変わり果てたふるさとの姿に言葉が出てこなかった。

 金沢学院大から現役生として初のドラフト指名を受けて楽天入り。プロ2年目の昨シーズン、5月にプロ初勝利を挙げた。身長190センチ。150キロを超えるストレートが武器だ。

 入団が決まった時、本社のインタビューに「穴水の皆さんの期待に応えたい」と語っていた。穴水高時代は公式戦で1勝もできなかった無名の存在。穴水から夢をつかんだ意地とプライドは、プロになった今も自身の根底にある。

 正月に用意されていた食料や水で食いつなぎ、4日に本拠地の仙台市に戻った。予定から1日遅れたのは「今、自分が穴水を離れてもいいのか」という葛藤があったから。

 9日、楽天のチームメートである島内宏明(小松市出身)、小孫竜二(金沢市出身)、昨季引退した釜田佳直スコアラー(小松市出身)と一人15万円を出し合って石川県に寄付した。

 少しでも故郷の力になれたら、と松井投手は本社にメッセージを寄せた。

 「今はすごく大変で、つらい思いをされている方が多くいらっしゃると思います。石川県出身のプロ野球選手として、地元の皆様を勇気づけるプレーができるよう、必死に頑張ります。復興に向かって、ともに頑張りましょう」

 プロ3年目のシーズンは2月のキャンプからスタートする。ふるさと復興の願いをボールに込め、マウンドに立つ。

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 「被災地にエールを送りたい」。石川県ゆかりのアスリートたちも心配を募らせています。ふるさとに寄せる思いや、北國新聞社に託したメッセージを紹介します。

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