トラックドライバー不足による「2024年問題」“対応”はどのくらい進んでいるのか? 専門家が解説

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。1月10日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「4月に迫った“物流2024年問題”対策は進んでいるのか?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。

※写真はイメージです

◆差し迫ってきた物流の「2024年問題」

トラックドライバーの労働規制が2024年4月1日(月)から強化されます。それに伴い、深刻な人手不足が懸念されている「2024年問題」。労働規制の強化が始まるまで3ヵ月を切るなか、どの程度、対策が進んでいるのでしょうか?

吉田:塚越さん、まずは物流の2024年問題とは何なのか改めて教えてください。

塚越:今年の4月から、トラックドライバーの時間外労働の上限が、年960時間に制限されることに付随して起きるさまざまな問題が「2024年問題」です。

働き方改革自体は良いことですが、物流業界はそもそも人手不足で、そこにドライバーの労働時間が短くなることでモノが運べなくなることが一層危惧されます。

民間シンクタンクの「NX総合研究所」によると、(2024年問題に対して何も対策をしなかった場合)営業用トラックの輸送能力は、コロナ前の2019年度に比べて、2024年には14.2%不足。2030年には34.1%も不足する可能性が指摘されています。

こうした問題を受けて、時事通信が去年の12月に荷物の送り手や受け手の大手企業にアンケート調査をしたところ、9割以上の企業が2024年問題で物流コストが上がると回答しています。対応できる体制について、「整えている」とした企業が78%に上る一方、22%は「まだ十分ではない」「十分かどうか分からない」と回答しています。

加えて言うと、国土交通省の調べでは2022年度の宅配便取扱個数は50億個で、10年前の1.4倍に増えており、コロナの巣ごもり需要は落ち着いたとしても、物流全体の需要はやはり増加傾向にあるといえます。

◆大手企業でも3割は「対応が難しい」「未定」

吉田:労働規制の強化が始まるまで3ヵ月を切りましたが、対策はどの程度進んでいるのでしょうか?

塚越:先程のアンケート調査では、他に物流コストの価格転嫁(=値上げ)について聞いており、すでに転嫁している企業も含め、転嫁する方針が7割となっている一方、「転嫁したいが難しい」が25%、「転嫁しない」も4%あります。

また政府は大手荷主企業に対して、物流の効率化等に関する計画策定を義務付ける法整備を今年中に進める方針ですが、こちらは7割を超える企業が計画を「策定済み」「策定予定」としたものの、4分の1は「未定」となっています。値上げやさまざまな準備が「できています」と回答しているのが7割程度。3割近くの企業は対応が難しいとのことです。

「7割程度、準備できているじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、このアンケートの対象は大手企業であり、回答していない企業もあれば、対象外の中小企業もたくさんあります。その点も考慮すると、実際はより厳しい状況になると考えられます(もちろん、今後は能登半島地震の影響もあるでしょう)。

◆一般ユーザー向けには「急がない便」の選択肢も

ユージ:例えば現在、どのような対策が進められていますか?

塚越:実際の対策としては、例えば、トラックの荷台の部分を連結させてドライバー1人で運べる量を増やす「ダブル連結トラック」という方法があり、専用スペースが作られています。去年9月段階で269台分設置し、さらに増やす方針ですが、ちょっと少なすぎる印象です。

他にもドライバーさんが日帰りできるように、目的地の中間地点で運転を変わってもらう「リレー方式」の導入や、荷物を一度に多く運ぶため、トラックから鉄道や貨物船に代替する「モーダルシフト」など、できることはおこなっているという印象です。

また、一般ユーザー向けですと、例えばネット通販サイトの「楽天」では、セール期間中に配達日を通常より遅らせたユーザーには楽天ポイントを付与する「急がない便(仮)」の導入を検討しているとのこと。実際に2022年に楽天がこのポイントを付与する実証実験をおこなったところ、配達日を指定しないユーザーは通常の3.5倍に増えたといいます。

これに関しては、民間調査機関の「MMD研究所」が去年5,000人を対象におこなったアンケートによると、「急がない便」があれば「利用したい」と答えた人は87.1%。年会費や特別料金を払うことで早めに配送をしてもらえる「お急ぎ便」はありますが、今後はポイントなどがつく「急がない便」も選べることで、良いことだなと思います。

◆政府は災害復興にリソースを優先させる判断を

ユージ:物流2024年問題の現状を、塚越さんはどうご覧になっていますか?

塚越:物流問題になると(個人ユーザーの)再配達が注目されやすいですが、実際は物流の大部分が「企業間輸送」です。建築に伴う資材の供給にも影響が出るので、議論になっている「大阪万博」にも資材の供給面で影響が出るということです。

もちろん、その何倍も大切な「能登半島地震」の復興の妨げにもなります。ただでさえ問題が重なるなかでは、いいとこ取りはできず、どうしても「限りある資源の適切な分配」が問われると思います。

だとすれば、少し話はズレるかもしれませんが、やはり今は万博ではなく災害復興にリソースを優先させ、そのために政府も支援をする。そういった方向で、まずは考えないといけません。この問題について、全部解決するのは難しいかもしれません。いま考えることは、そこにリソースを割くことだと思います。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ

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1月10日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2024年1月18日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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