「源氏物語絵巻」6巻を一挙公開 優美な王朝文化にスポット 大河ドラマに合わせ兵庫で企画展

「源氏物語絵巻」須磨の巻の一場面。都を離れる前に、息子らと別れを惜しむ光源氏(丹波篠山市教育委員会提供)

 現存する世界最古の長編小説とされる「源氏物語」をテーマにした企画展「源氏物語-平安王朝の雅」が、丹波篠山市立歴史美術館(兵庫県同市呉服町)で開催されている。版本や写本など13点を出品し、市指定文化財の「源氏物語絵巻」(須磨・明石)全6巻を一挙公開。「貝合わせ」など、優美な王朝文化にもスポットを当てている。(堀井正純)

 「源氏物語」は古典文学の傑作で、天皇の子である貴公子・光源氏の恋愛や権力闘争など、平安時代の貴族社会を描く。展覧会は、作者・紫式部がヒロインとなるNHK大河ドラマ「光る君へ」の放映を前に昨年12月に開幕した。旧篠山藩青山家の旧蔵品などを中心に展示構成している。

 目玉となる「源氏物語絵巻」は、江戸時代後期の作品で、元の図は狩野派の絵師・狩野典信が制作。篠山藩主青山忠裕が、藩のお抱え絵師・栄保典繁らに写させたものという。人や風景を鮮やかな色彩で丹念に描写している。

 「源氏物語絵巻」は、国宝をはじめ、各地に現存するが、青山家の伝来品が取り上げているのは「須磨」「明石」の巻。都を離れた光源氏の須磨でのわび住まいや明石の君との出会いなどを描く。同館の古西遥奈学芸員は「十二単(ひとえ)の華やかな女性らに囲まれた都での光源氏と地方での様子を見比べ、その悲哀なども感じてもらえれば」と語る。

 古西学芸員によると、源氏物語は、室町時代に注釈書が作られ、江戸時代には、ダイジェスト本やパロディー本も刊行されて、庶民にも親しまれるようになった。会場には、源氏物語の概要を記した「源氏物語忍草(しのぶくさ)」やパロディー本「偽紫(にせむらさき)田舎源氏」なども陳列している。

 このほか、360個のハマグリから、ペアとなる貝殻を探す遊び「貝合わせ」の道具、「源氏香」と呼ばれる香道のセットなども紹介する。青山家に伝わっていたという貝合わせの貝の内側には、源氏物語の名場面などが描かれており、遊び道具とはいえ実に華麗。武家である大名家にも、当時は優美な公家文化が取り入れられていたことが分かる。

 同展は4月7日まで。原則月曜休館。午前9時~午後5時。一般300円ほか。同館TEL079.552.0601

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