子どもにおこづかいを渡している?いつから始める?ルールはどうする?臨床心理士の視点からお伝えします!

そろそろおこづかいのことを考えなきゃ。
金銭感覚も養ってほしいし、どんな決めごとで渡せばいいんだろう?今回は、そんな悩みについて、臨床心理士である大阪カウンセリングセンターBellflower代表、町田 奈穂さんにお伺いしました。

おこづかいのルールについて

おこづかいのルールとしては、大きく二つ、(1)毎月決まった額を渡す、(2)お手伝いなどをした時に一定額を渡す、とが考えられます。

(1)毎月決まった額を渡す

毎月安定しておこづかいをもらえますので、いくらもらえるかが明確になっており、安定して使い道の計画を立てやすい作用があると考えられます。一方でもらえる最大額が決まっているので、少し高めのものが欲しいと思っても、貯めるまでに数ヶ月~1年かかるとなってしまうなど、なかなか自由度が低いです。

(2)お手伝いなどをした時に一定額を渡す

自分がお手伝いをした時におこづかいがもらえますので、最大額がなく、欲しいものがあれば自分の努力次第で目標に早く辿り着けると考えることもできます。一方で、家のことなど、お金をもらえないならしない、という外発的報酬によるモチベーション低下の課題も考えられます。例えば、これまで進んでお手伝いしていたものも、一度お金を渡すことによって、「家族のために」というモチベーションが「お金のために」と変化してしまうのです。その点では(1)であれば、「家族のために」や「自分でできるようになりたい」という内発的な動機づけのもとお手伝いなどを進んでやるとも考えられますが、こちらは何もしなくても定期的におこづかいが手に入りますから、そもそもやろうとすらしない、という最初のハードルも考えられます。

おこづかいのルールに大切なこと

どのようなおこづかいのルールにするとしても、最も大切なことは、ご家庭の教育方針に沿ったルールが最も望ましいということではないでしょうか。
学研教育総合研究所が行なっている調査によると、おこづかい金額を決めることやおこづかいをもらっている小学生の数は年々減少傾向にあるようです。また、東京大学で行われた研究によると、こどもの教育の一環としておこづかいを与える家庭が多く、金銭感覚を養う目的だけでなく、我慢やルールを身につけるためにおこづかいを与えるという目的もあるようです。
(出典元:学研教育総合研究所 小学生白書30年史(1989~2019年)「小学生の学習・日常生活の30年を振り返る」第2部 小学生の生活・生活環境の変遷 5. お金(1)おこづかい(金額)
鶴菌佳菜子・山口泰史・鈴木翔・武田真梨子・須藤康介、2012「家庭の教育戦略としてのおこづかい」東京大学大学院教育学研究科紀要 第52巻 p157-167)
2022年4月から高校での金融教育が義務化されるなど、近年は全国的に子どものうちからお金について学ぶことは必要不可欠と言われています。どのようなルールであっても、ご家庭でのおこづかいのルールは必ず子どもたちの学びに繋がるといえるでしょう。

いつから子どもに管理させるといい?

多くのおこづかいに関する調査は小学校1年生~を対象にしていることが多いです。
子ども同士の交流も小学校に入学してからぐっと増えますし、たくさんのお友達に出会って刺激を受け始める時期です。また、心理的に何かを始めるのに最も適している時期のひとつとして、誕生日や学年度、新年度の切り替わる時期があげられます。
ですので、子どもに管理を任せ始める時期として小学校1年生や低学年から高学年に切り替わる小学校4年生などの時期もよろしいのではないでしょうか。

金銭感覚を養う方法

子どもは日々、私たち大人が想像するよりもはるかに多くのことを見て学んでいます。その吸収力は非常に優れています。
ですので、金銭感覚を養うために、物やサービスの値段、家計などについて日常的に話されるとより現実的な金銭感覚を養うことが出来ると考えられます。例えば、夕食の食材を買いに行ったスーパーで「今日は〇〇と〇〇をつくるよ。全部でいくらになるかな?」と食費について想像を膨らませたり、自動販売機でジュースを買いたいとねだった際に、「今ここで150円で500mLのジュースが買えるね。でももう少し歩いてスーパーに行けば150円で1Lのジュースが買えるよ。どっちがおトクかな?」と考えさせてみることもできます。金銭感覚と同時に日常的な算数のお勉強にもなりますね。
子ども達は最初、突拍子もない金額を言うでしょう。しかし、何度も繰り返し問いかけと答え合わせを繰り返していくことで、子ども達は学習し、非常に鋭い金銭感覚を身につけることができます。
このようにおこづかいだけでなく、日常的にさまざまな場面でお金の話をしていくことが子どもの成長発達にとってたくさんの良い学習の機会を提供することになるので、ぜひおすすめです。

執筆者

町田奈穂
臨床心理士・公認心理師

経歴
同志社大学大学院 心理学研究科修了。
在学時より滋賀医科大学附属病院にて睡眠障害や発達障害に苦しむ人々への支援や研究活動を行う。
修了後はスクールカウンセラーやクリニックの臨床心理士を経験。
2020年、父の病気を機に父が経営する機械工具の卸売商社へ入社。
そこで多くの企業のメンタルヘルス問題に直面し、大阪カウンセリングセンターBellflower(大阪府寝屋川市) を設立。
現在は、父の後を継ぎ機械工具の卸売商社の代表を務めるほか、公認心理師・臨床心理士として大阪カウンセリングセンターBellflowerを新規事業とし、支援者支援をテーマとした研究や臨床活動を行っている。

大阪カウンセリングセンターBellflower
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