「空回ってしまう」舞台で貫禄の19人抜き 田中希実、パリ五輪へ「初速のまま駆け抜ける1年に」 都道府県駅伝

兵庫の2区田中希実(右)が3区藤田莉沙にたすきを渡す(撮影・風斗雅博)

 格の違いをこれでもかと見せつけた。全国都道府県対抗女子駅伝で兵庫の2区を走った田中希実(ニューバランス、西脇工高出身)は貫禄の19人抜き。兵庫県小野市の小野南中2年時からほぼ毎年走ってきた大会で同3年(8区)以来となる区間賞に輝き、「感慨深い」とかみしめた。

 1区永長から継いだ時点で1位と59秒差の20位。「集団の中で粘ってくれた。先頭を狙えない位置ではない」と前の走者を捉え続けた。2.5キロ付近で首位に立った後、沿道の声で2009年に小林祐梨子が残した区間記録が射程圏と気付いたが、「出しきったが(4秒)届かなかった。やっぱり偉大」と故郷の先輩に脱帽した。

 各年代でトップを競い、世界で戦うランナーになっても、都道府県駅伝は「空回ってしまう」という舞台だった。長く区間賞が取れず「向いてないのか」とさえ感じていたが、パリ五輪開催年の初レースで壁を破った。「きょうの駅伝みたいに、最初の速度のまま駆け抜ける1年に」。幸先の良い五輪イヤーの幕開けとなった。(初鹿野俊)

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