【台湾】台湾総統選、頼清徳氏が当選[政治] 民進党政権継続、中国圧力強化か

勝利宣言し、支持者に向かって手を振る頼清徳氏(左)と蕭美琴氏(右)=13日、台北(NNA撮影)

4年に一度の台湾総統選は13日、投票が行われ、即日開票の結果、与党、民主進歩党(民進党)の頼清徳副総統(64)が最大野党、国民党の侯友宜・新北市長(66)、野党、台湾民衆党の柯文哲・前台北市長(64)の二人を破り、初当選した。台湾では初の政権交代が実現した2000年以降、2期(8年)ごとに政権交代を繰り返してきたが、同一の政党が3期連続で政権を担うのは初めて。中国は「台湾問題は中国の内政」とする談話を発表。経済、軍事面で台湾への圧力を強めると指摘されており、緊張が高まる恐れがある。

総統選と同時実施された立法委員(国会議員)選挙(定数113)で、民進党の獲得議席数は51と、目標としていた過半数には届かなかった。国民党は民進党を上回る52議席を獲得しており、頼氏は総統就任後、難しい政権運営を迫られそうだ。

頼氏は13日夜、台北市の集会会場のステージに姿を現し、大勢の支持者を前に勝利宣言した。「民主主義と権威主義の間で、われわれは民主主義の側に立つことを選んだ。中華民国台湾は民主主義の道にあり、海外の盟友とともに進み続ける」と強調した。

選挙戦を通じて、台湾人の民主主義に対する堅持を世界に見せることができたと指摘。統一圧力を強める中国に対して、「こうした声を十分に理解することを望む」と述べた。その上で「両岸(中台)は対話と交流をすることではじめてリスクを下げることができる」と訴え、「封じ込めではなく交流を、対抗ではなく対話をしてこそ、平和と共存共栄を実現できる」と強調した。「平和、対等、民主、対話」だけが両岸人民の利益に最も合致し、ウィンウィンとなる唯一の道だとも述べた。

一方、侯氏は新北市の集会会場で「残念ながら政権交代を実現することはできず、みなさんを失望させてしまった」と述べ、敗北を認めた。

柯氏も支持者に感謝の意を示した上で「選挙に勝つことはできなかったが、われわれは世界に向けて、台湾(の政党)は藍(国民党)と緑(民進党)だけではないことを証明できた」と胸を張った。

台湾の中央選挙委員会(中選会)によると、得票数は頼氏が558万6,019票で、得票率は40.05%。侯氏は467万1,021票(得票率33.49%)、柯氏は369万466票(同26.46%)だった。

県市別の得票率を見ると、頼氏の得票率は台北、新北、桃園、台中、台南、高雄の行政院(内閣)直轄6市を含む計14県市でトップとなった。侯氏の得票率が最も高かったのは新竹県、苗栗県、金門県など8県市。柯氏はゼロだった。

■中国「民進党は主流の民意代表せず」

中国国営通信社の新華社によると、中国で台湾政策を主管する中国国務院(政府)台湾事務弁公室(国台弁)の報道官は13日夜、「今回の二つの選挙結果は民進党が(台湾)島内の主流の民意を代表していないことを示した。台湾は中国の台湾だ。祖国統一を妨げることはできない」と表明。両岸関係の平和的な発展を推進し、祖国統一の大業を推し進めるとした。

中国外務省も13日夜、台湾の選挙について記者の質問に答える形で「台湾問題は中国の内政だ。台湾島内の情勢がどのように変化しようとも、世界には一つの中国しかなく、台湾が中国の一部分であるという基本的事実は変わらない」と強調した。中国政府は「一つの中国」原則を堅持し、「台湾独立」、「二つの中国」と「一中一台」に反対する立場が変わることはないとした。また、「一つの中国」原則は台湾海峡の平和と安定を守る重要な鍵だと強調した。

これに対し、台湾外交部(外務省)は14日、中国側が「台湾問題は中国の内政」とした点について「国際的な認識と両岸の現状に全く一致していない」と反論。中国に対して「選挙結果を尊重するとともに、現実と向き合い、台湾への圧力をやめることではじめて、両岸の良好な交流を正常な軌道に戻すことができる」と呼びかけた。

支持者を前に敗北を認める侯友宜氏(左)=13日、新北(NNA撮影)

■中国との関係など争点に

総統選では中国との関係が大きな争点となり、頼氏は両岸関係について、現状を維持することが台湾と国際社会にとって最大の利益だと強調。侯氏は現状維持を掲げつつ、両岸問題を「重中之重(非常に重要)」と位置付け、中国に対して開放政策を取る考えを示していた。柯氏は、台湾は現時点で統一も独立もできないとし、「両岸の問題を実務的に処理する」としていた。

中国との向き合い方のほか、経済・産業、エネルギー政策、若者の低賃金や住宅価格の高騰などの問題も争点となり、各候補は論戦を展開した。

3党は昨年4月から5月にかけて3人の擁立を発表。世論調査の結果などから頼氏の優位な情勢が伝えられる中、国民党と民衆党は昨年10月以降、政権交代に向けて候補一本化に関する協議を実施した。ただ、侯氏と柯氏のどちらを総統候補、副総統候補とするかの決定方法を巡って意見がまとまらず、一本化は実現しなかった。11月下旬の立候補の受付最終日に侯氏と柯氏はそれぞれ届け出を行い、無所属での出馬を目指したEMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手、鴻海精密工業の創業者の郭台銘氏が最終的に出馬を見送るなど、目まぐるしい展開となった。

頼氏は5月20日、現職の蔡英文総統に代わって総統に就任する予定。副総統には蕭美琴・前台北駐米経済文化代表処代表(駐米大使に相当)が就く。

敗戦の弁を述べる柯文哲氏(中央)=13日、新北(NNA撮影)

© 株式会社NNA