焦土の中 懸命の捜索 「何としても」栃木県警活動開始 輪島朝市・本紙記者ルポ

火災で焼失した「輪島朝市」で捜索に当たる栃木県警の緊急災害警備隊=14日午前11時50分、石川県輪島市

 焼け落ちた建物のがれきや車の残骸が一面に広がり、焦げた臭いが漂う。大規模火災により荒涼とした風景に一変した石川県輪島市の観光地「輪島朝市」周辺で14日、栃木県警の緊急災害警備隊が捜索活動を始めた。「何としても」と安否不明者の手がかりを捜した。ひび割れや隆起した道路などが復旧や支援を難しくする半島の被災地。住民は整理のつかない心情を口にした。最大震度7を観測した能登半島地震は15日、発災から2週間を迎えた。

 記者は14日早朝、輪島市内に入った。海産物や土産物を取り扱う店が軒を連ねた朝市。西方面へ歩くと突然、視界が開けた。約200棟が焼け、焦土と化した火災現場。全体が黒や灰色、赤茶けた色で覆われ、所々に雪が残っていた。

 波打ったトタンが地面を覆うように転がる。タヌキの置物や鍋、湯飲み茶わん…。暮らしの痕跡もあった。ただ、2週間前までのにぎわいは想像できない。

 厳しい冷え込みとなる中、全国の警察や消防、自衛隊などが朝から現場周辺を捜索した。栃木県警の隊員53人は、安否確認ができていない住民のいる建物4軒分を受け持った。

 ヘルメットやゴーグルを着け、スコップや金属製の棒で土やがれきをさらった。土をバケツリレーで運び出す。焼損がひどく何を掘り起こしているか分からないものも多い。手がかりがないか、懸命に捜した。

 「想定よりもずっとひどい」。県警関東管区機動隊の中村優太(なかむらゆうた)中隊長(42)は絶句した。一方で「つらい思いをしている被災者のために全力を尽くす」と話した。警備隊は19日まで、輪島市内などで活動する。

 現場で茂木町出身の女性(83)に出会った。大規模火災で自宅を失った。大津波警報の発令で慌てて家を飛び出したまま、避難生活が続く。14日は勇気を出し、火災後初めて自宅があった場所を訪れた。「こんなになってしまうなんて…。知り合いが何人か亡くなった。日に日に悲しくなってくる」と目元を拭った。

 横倒しになったビル。路地をふさぐように何軒も倒れた家屋。神社は社殿がつぶれ、こま犬が落ち砕けていた。現実とは思えない悲惨な光景が市内に広がる。

 同市河井町、無職男性(69)は避難時、近所の1人暮らしの女性宅が倒壊していることに気付いた。何とか助けようと呼びかけたが返事はなかった。数日後、女性の遺体が見つかった。

 「悲しい気持ちはあるが、ずっと夢の中にいるようで感情の整理ができない」。そう胸中を吐露した。

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