旅館、民宿、再開へ動く 断水解消の氷見北部

営業再開に向け、客室の準備を進める従業員=氷見市姿の旅館

  ●「復興支援の力になりたい」

 能登半島地震後の断水がほぼ復旧した氷見市北部の旅館や民宿で、営業再開の動きが広がってきた。地震で宿泊予約のキャンセルが相次いだ各施設は、一日も早くオープンしてにぎわいを取り戻そうと急ピッチで準備を進める。能登に向かう災害ボランティアやインフラ業者のほか、避難者からも宿泊予約が入っており、経営者らは「復興支援の力にもなりたい」と意気込んでいる。

 「断水の復旧を待ちわびていた。ようやく開けられる」。今月2日以降、宿泊営業を休止していた同市姿の旅館「ひみのはな」の柿谷宗明支配人(42)は、15日からの再開にこぎつけ、胸をなで下ろした。

 ひみのはなは12日に断水が解消。以降は、洗えないまま山積みになっていた食器類や浴衣、タオルの洗浄のほか、客室の掃除を大急ぎで進めた。地震後のキャンセルは1月を中心に約2千人で、売り上げの損失額は約2千万円に上るが、柿谷支配人は「コロナでも乗り越えられた」と前を向く。

 13日に再開した日帰り入浴では、隣の七尾市の被災者が続々と来場しているほか、長引く避難生活の息抜きを目的とした宿泊予約も入っているという。柿谷支配人は「自分たちのできることで復興に一役買えたらうれしい」と力を込めた。

 脇方の「創作割烹 潮乃美」も15日からの再開を決めた。予約は約150人がキャンセルとなったが、今月下旬からは常連客らの新規の予約もぽつぽつと入り出したという。

  ●「ブリは大漁」

 ブリ料理の予約が多いといい、料理長の浅野紀夫さん(66)は「幸いブリは大漁。こんなときに来てくれるお客さんには精いっぱいサービスせんといかんね」と腕まくりした。

 14日に再開した阿尾の民宿「みろくの湯の宿こーざぶろう」は同日、早速約30人の日帰り客を受け入れた。宇波の旅館「うみあかり」も15日から再開。18日からは災害ボランティアを受け入れ、産業廃棄物処理業者や水道業者からも宿泊の問い合わせがあるという。

 一方、市観光協会のホームページのまとめ(14日時点)によると、依然再開時期が未定の施設が複数ある。松原勝久会長は「氷見は能登の玄関口。協会としてバックアップし一日も早い全加盟施設の再開を目指したい」と話した。

断水が解消し、厨房で食器を洗う料理人=氷見市姿の旅館

© 株式会社北國新聞社