〈1.1大震災〉輪島で崩れた夫婦の夢 熊本出身・末藤さん犠牲

愛猫のてんちゃんを抱えて笑顔を見せる末藤翔太さん。生前最後の1枚となった(12月30日撮影、佳織さん提供)

 熊本県から輪島市に移り住み、地域おこし協力隊員を務めていた末藤翔太さん(40)は自宅の倒壊に巻き込まれ、命を奪われた。12月30日、夫婦の愛猫「てんちゃん」を抱えて笑う翔太さん。これが最後の写真になった。同じ熊本出身の妻佳織さん(39)は「私が生きているのは、間違いなく夫のおかげ。守ってくれてありがとう。守れなくてごめん」と気丈に話した。

 1日、自宅にいた2人。佳織さんは平屋建ての部分、翔太さんは2階建て部分の1階にいて、爆発したような激しい揺れに襲われた。翔太さんはがれきに圧迫されて亡くなった。

 2人は2017年に結婚し、22年春に輪島へと移住した。きっかけは「金継ぎ」の経験がある佳織さんが漆を本格的に学びたいと思ったことだった。優しい夫は笑顔で輪島についてきてくれた。

 佳織さんが石川県立輪島漆芸技術研修所に入所し、翔太さんは隊員となって、輪島、門前両高の魅力向上に取り組んだ。夫婦で「いろんな人が集うコミュニティースペースをつくろう」と語り合った。翔太さんは「高校生の居場所をつくりたい」と隊員としての夢も描いていた。

 16年の熊本地震の際、福岡県久留米市で揺れを経験した2人。奥能登をたびたび襲った地震でも「怖いね」と話し合うことがあった。

  ●愛猫は行方不明

 「てんちゃん」の行方も分からないままだ。2人の故郷・熊本県に避難した佳織さんは「おいしい食べ物と、温かい人に囲まれた輪島が好きで、どこまでも優しい人でした」と話した。

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