自衛隊に先駆けた無料風呂 被災者400人超の心も温める

被災者に無料開放しているオーシャンビューの大浴場=11日、石川県能登町

 能登半島地震で被災した人の心と体を温めようと、石川県能登町にあるバイク乗り向けのカフェ兼宿泊施設を営む大場小都美さん(63)が風呂を無料開放している。「いち早く助けてこそ支援。地域に少しでも恩返ししたい」。町での自衛隊の入浴支援より5日早く開始し、延べ400人超が訪れた。

 大場さんは元シェフで、趣味はバイク。約10年前、憧れだったバイク乗りの拠点づくりを決意した。選んだ土地は能登町の海岸沿い。視界一面に紺碧の海が広がり、水平線の先に佐渡島や立山連峰も望める。金沢市出身で地域では新参者だったが、徐々に施設整備を手伝ってくれる客も増えた。

 元日、娘らと金沢市に向かう車中にいた。背後で激しく隆起した路面に言葉を失った。町に戻ると多くの建物がなぎ倒されていたが、カフェと施設は無傷だった。「奇跡。神様が使命を与えてくれた」。湧き水を沸かすボイラー設備があり、宿泊者用の風呂を提供できると考えた。

 4日に無料開放を始め、ぽつぽつと避難者がやってくるように。口コミも広がり、最大5時間待ちの列ができるほどになった。

© 一般社団法人共同通信社