吉田美和バラードの真骨頂!冬のドリカム超名曲「WINTER SONG」【ミリオンヒッツ1994】  94年リリース、ドリカム冬の名曲「WINTER SONG」の荘厳な世界!

「雪のクリスマス」の英語バージョンとして4年後にリリース

冬の名曲を考えたとき、それぞれに浮かぶ楽曲があるだろう。筆者にとってはその中の1つが1994年にリリースされたDREAMS COME TRUEのシングル「WINTER SONG」だ。歌詞が全て英語というのも、とても斬新に感じられた。この曲は、実は1990年にリリースされたシングル「雪のクリスマス」の英語バージョン。当時、なぜわざわざ英語にしてふたたびシングル発売するのだろうかと、ちょっと不思議に感じたことを覚えている。

  • この「雪のクリスマス」自体、当時のドリカムにしては非常にシンプルで、言葉を臆せずに言うなら地味な印象が強かった。「あなたに会いたくて」で鮮烈にデビューし、「APPROACH」「うれしはずかし朝帰り」では弾ける笑顔で恋の楽しさを、「LAT.43°N 〜forty-three degrees north latitude~」では三角関係の恋の苦しさを痛いほどリアルに歌い上げたドリカム。続く「笑顔の行方」「Ring!Ring!Ring!」では恋することの喜びを、「さよならを待ってる」では別れの辛さを歌ってきたドリカム。

当時は、ユーミンとは一線を画した恋愛ソングの新しい形を見せてくれた存在でもあった。ユーミンが永遠に残る詠み人知らずな文学的恋愛ソングの神ならば、ドリカムは等身大リアルな女の子の共感を歌った “仲間や同士、そして代弁者” といった存在でもあったように思う。そんな人気に沸く中、「雪のクリスマス」がリリースされた。

「WINTER SONG」の奥行きの深さと荘厳な世界

今思えば、「雪のクリスマス」に感じた私の幼さ故の “あれ?” という気持ちは、そのシンプルなサウンドの作りにあったように思う。あの頃の自分は、シンプルに見せることが音楽作りで最も難しいことだと知らなかった。だから、後に「WINTER SONG」で感じた壮大な世界観をこの時感じることが出来なかった。

「雪のクリスマス」は4年後に「WINTER SONG」として英語の歌詞で甦った。サウンド自体はそんなに変わっていないのに、イメージがまったく違って聴こえてきたことに驚いた。英語の歌詞のハマリ具合があまりに滑らかで違和感がなく、素晴らしかった。それもそのはず。英語詞バージョンはドリカム結成以前からあって、「雪のクリスマス」よりも前に完成していたのだから。

これは推測の域を出ないのだが、メンバーとしてはこれだけ高いクオリティの楽曲だったのだから、英語詞バージョンをそのままの形で先に出したかったのではないだろうか。

しかし、「雪のクリスマス」の発売日は11月21日とクリスマス前であり、もしかすると当時、この時季になると判を押したように “クリスマス時期にはクリスマスソングを歌うべし” というようなマーケティング的な流れに乗って日本語でリリースされたのかもしれない… なんていらぬ想像をしてしまった。

そんな邪推や勝手な想像はさておき、「WINTER SONG」の世界観は本当に素晴らしいなぁといつ聴いても思う。英語が理解できなくても、ひとたび曲が流れてくるとイントロから雪の情景が目の前に浮かび寒さに震える。そして、なぜか不思議と自然に空を見上げてしまう。

雪が降っていない日でも、心の中ではしっかりと雪がひらひらと舞い降りてくるのだからすごい。シンプルなサウンドがメロディの美しさを際立たせ、心に深く深く沁みてくる。今となっては、初期のドリカムのバラードのすごさ、そしてバラードの奥行きの深さ、豊かな表現力を見せられた楽曲だったなぁと思う。

オリジナルアルバムに収録されなかった「雪のクリスマス」

ちなみに「雪のクリスマス」はオリジナルアルバムに収録されていない。2016年7月7日に発売された裏ベストアルバム『DREAMS COME TRUE THE ウラBEST!私だけのドリカム』で、ボーカルの再録バージョンとして収録されている。

「WINTER SONG」は2000年以降、いくつかのベストアルバムや企画アルバムに収録されていることも記しておきたい。ライブでは前半を「WINTER SONG」として英語詞で、後半を「雪のクリスマス」として日本語で歌ったり、アップテンポにアレンジしたりするなど、2曲をミックスして披露されることもある。これを観るたびに、それぞれに違った魅力を感じさせる。「WINTER SONG」の世界観を感じることで、「雪のクリスマス」で描かれた物語も自分の中に溶け込んでゆく。2曲がこの世に生み出されたことが心から嬉しくなる。

カタリベ: 村上あやの

* 編集部より:読者の方から貴重なご指摘をいただき、本文を一部訂正いたしました(2024.1.17)

アナタにおすすめのコラム ドリカムの初ミリオン「決戦は金曜日」吉田美和を巧みに操る中村正人の戦略とは?

▶ DREAMS COME TRUEのコラム一覧はこちら!

80年代の音楽エンターテインメントにまつわるオリジナルコラムを毎日配信! 誰もが無料で参加できるウェブサイト ▶Re:minder はこちらです!

© Reminder LLC