風力発電の人材育成 茨城・鹿島臨海部に完成 国際認証の訓練施設

洋上風力発電施設の保守点検などを想定した訓練施設「ウィンド・パワー・トレーニングセンター」=神栖市南浜

風力発電のウィンド・パワー・グループ(茨城県神栖市、小松﨑衞社長)が鹿島地区臨海部で建設を進めてきた総合訓練施設「ウィンド・パワー・トレーニングセンター」が完成した。国際認証を受けた訓練により、洋上風力発電施設の保守点検や緊急時対応の人材を育成する。4月に開業し、年間千人の育成を見込む。

施設は高所作業などを学べるよう、風力発電施設と同じはしごなどを整備。洋上でのメンテナンス、緊急時を想定した訓練を行うプールも設けた。総事業費は約5億円。

風力発電の大型風車は国内メーカーが撤退し、海外製が主流となっている。海外大手メーカーなどで組織する世界風力発電機構(GWO)は、訓練の国際標準規格を設定。メンテナンスを行うには国際認証のトレーニングを受講することが求められる。

同社によると、GWOのプログラムが学べる専用施設として設計、建設されたのは国内で初めて。国際標準規格の「GWO基本安全訓練5モジュール」を一貫して受講できる。

同社は、訓練施設の運営で実績のある台湾企業と2022年に基本合意を交わし、施設設計の助言やインストラクターの育成などに協力を得た。

受講内容は①応急処置②マニュアルハンドリング③火災予知④高所作業⑤海上生存技術-の5分野に分かれる。風車内でけがをした場合の対処、資材の運搬方法など、安全確保やメンテナンス技術を学ぶ。

トレーニングは計5日間で約35時間。料金は約30万円。今月プレオープンし、4月に本格稼働する。年間を通じた受け入れと立地環境を生かし、首都圏を中心に全国からの受講者を見込む。当面、年間千人程度の育成を見込む。

政府は脱炭素社会の実現に向け、風力発電を次世代の有力な再生可能エネルギーの一つと位置付ける。一方で人材の不足が指摘される。日本風力発電協会などによると、洋上風力発電事業の人材は、50年には4万8500人が必要と推計され、技術者養成が課題となっている。

小松﨑社長は「優れた人材の育成は急務。先進の海外トレーニングセンターと提携するなど事業の拡大と質の向上を目指す」としている。

© 株式会社茨城新聞社