南部菱刺し古作、写真集で魅力紹介 八戸工業大(青森県)が刊行

写真集「ひしざし」を制作した八戸工業大学の「菱刺しラボ」のメンバーと県伝統工芸士の山田さん(左)
写真集「ひしざし」の表紙

 八戸工業大学感性デザイン学部の川守田礼子准教授と同学部生のチーム「菱(ひし)刺しラボ」が、青森県南地域に継承されてきた刺し子技法「南部菱刺し」の古作の写真集「ひしざし」を刊行した。かつて青森市歴史民俗展示館「稽古館」(2006年閉館)で展示され、現在同市が所蔵する県有形民俗文化財「青森の刺しこ着」1014点の中から、明治-大正時代の前垂れや着物、たっつけ(ももひき)など23点を色鮮やかなカラー写真で紹介している。

 南部菱刺し研究に取り組む川守田准教授は、稽古館閉館後に市民が古作を目にする機会がほとんどなくなったことから、その魅力を多くの人と共有したい-と写真集制作を企画。青森学術文化振興財団(青森市)の本年度助成を受け、青森市教育委員会文化遺産課の協力を得て昨年11月、資料の撮影を行った。

 「青森の刺しこ着」のうち南部菱刺しの資料は252点。このうち色彩が鮮やかなものや、伝統的な柄の組み合わせがはっきりと分かる資料を写真集に掲載した。表と裏の模様の違いが分かる写真、布目や模様の拡大写真もある。

 写真撮影と編集に携わった菱刺しラボの佐藤匠さん(同学部4年)は「写真集をきっかけに南部菱刺しのデザインが広まり、認知度が高まってほしい」、編集に協力した県伝統工芸士の山田友子さん(八戸市、南部菱刺し研究会つづれや)は「古作を見ると昔の人がおしゃれだったことがよく分かる。先人を誇りに思い、菱刺しに興味を持ってもらえたら」と話した。

 写真集はA4判、36ページで非売品。同大は県教育委員会、市町村教委、高校、図書館など県内約250カ所に寄贈したほか、今月中に大学ホームページでデジタル版を公開予定。

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