パーパス・プロフェッショナルになるための6つのステップ キャリアを生かしより良い変化をもたらすには

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ますます多くの企業が自社の存在意義を示す社会的パーパスを掲げるようになっている。社会的パーパスを掲げる“ソーシャルパーパス企業”にはさまざまな定義があるが、基本的には、より良い世界をつくることが存在意義となっている企業を指す。利益を得て人や地球の課題解決を行いながらも、害を及ぼさないことも要件の一つだ。これは、すべての人の長期的なウェルビーイングにも貢献できる最適な企業戦略といえる。(翻訳・編集=小松はるか)

パーパスを掲げる企業は、宣言するだけにとどまることなくすべての取り組みに積極的にパーパスを統合している。それができなければ“パーパスウォッシュ”のリスクに陥ってしまう。パーパスを実行するということは、パーパスをガバナンスに組み込み、内部監査やリスク管理、マーケティング、人事など全ての部門を通じて取り組むということだ。

企業がパーパスを実装するために重要なのが測定基準だ。マーケターや人事マネジャーは、顧客や従業員にパーパスが浸透しているかを測る基準を必要としている。先進企業は、パーパスの信頼性、ステークホルダーとの連携や、パーパスの実装に取り組む意欲を測定するために意識調査を行なっている。例えば、「この企業は本質的で、パーパス・ドリブンな企業だと思うか?」「この企業と関わることで、自分は世界をより良い場所にしたいと考えているか?」「この企業のパーパスに貢献しようという気持ちになるか?」というような質問をする。

しかし、パーパスを実際に達成するには、企業はまず半年から1年を費やし、社内でパーパスの認知度を高め、社会的パーパスを持つ企業とそうでない企業がどう異なるのかを従業員が理解できるようにし、自らの役割やチーム、部署においてパーパスを生かすために従業員が知識やスキルを備えられるように取り組む必要がある。

パーパスをけん引する「ソーシャルパーパス・プロフェッショナル」

そこで、パーパスの実装に携わる職務に就いている人たち、特にリーダー層向けのツール「ソーシャルパーパス・プロフェッショナル」を紹介する。パーパス経済への移行を促進する“カナダ・パーパス・エコノミー・プロジェクト(Canadian Purpose Economy Project)”が発行したものだ。

ソーシャルパーパス・プロフェッショナルとは、パーパスを掲げそれに基づいて行動するパーパス・ドリブンな企業のなかで、組織の社会的パーパスを積極的に活用するだけでなく、部門・チーム内にパーパスを取り入れようとする経営層や管理職のことだ。そうしたリーダー層の人々は、組織やその垣根を越えてより良い社会をつくるための推進力になる。さらに、自社と関わる企業に社会的パーパスを採用するよう促し、組織内外の人たちがパーパスに基づいて行動するように巻き込んでいく役割も果たす。彼らは社会的パーパスに基づく意思決定を行う手本となる人物であり、組織や職業の枠を超えて社会的パーパスを積極的に推進する人たちだ。

このツールのメリットは大きい。当然のことだが、ソーシャルパーパス・プロフェッショナルは企業が確実にパーパスを実行する上でも、パーパスウォッシュと非難されるリスクを低減するのにも役立つ。形ばかりではない“生きたパーパス”は、経営層や管理職が、価値観を重視する従業員やチームを魅了し、引き込み、動機を与える手助けにもなるだろう。同時に、企業の内外においてパーソナルブランドを構築するのにも役立つ。社会的パーパスに関する専門的な知識や実績は、こうしたリーダー層の人たちの経歴の一つにもなり、彼らの仕事にさらなる意義をもたらすこともできるのだ。

ソーシャルパーパス・プロフェッショナルになるための6つのステップ

「ソーシャルパーパス・プロフェッショナル」は、パーパスを掲げる企業の従業員にとって必読のツールだ。ここでは、ソーシャルパーパス・プロフェッショナル(専門家)になるための6つのステップを紹介する。

1 ソーシャルパーパス について学ぶ
1)ビジネス記事を読み、ソーシャルパーパスに携わるソートリーダー(思想的指導者)やインフルエンサーをフォローする。例えば、カナダ・米国のおすすめのサイトやSNSはこちら
2)カナダ・パーパス・エコノミー・プロジェクトが発行するメールマガジンも参考になる。

2 ソーシャルパーパスの実装に取り組む団体・コミュニティを立ち上げる
1)自社と関連する産業や地域のマーケットのなかで、ソーシャルパーパスを掲げる企業を探す。そのなかで自社と同規模の3~4社から、パーパスをどう実装しているかを学ぶ。
2)部署の中でソーシャルパーパスの実装に取り組む同僚を探し、1年に数回は集まって課題や成功事例、信頼できる情報を共有し、互いに学び合うためのコミュニティをつくる。

3 自らのチームのメンバーに働きかけ、ソーシャルパーパスを業務に統合する
1)自社のソーシャルパーパスにつながる「部門内の」ソーシャルパーパスを定める。
2)チームのすべてのメンバーのためにソーシャルパーパスの達成目標を策定し、インセンティブや評価プログラムにソーシャルパーパスの項目を取り入れる。また自身の業績目標にソーシャルパーパスの達成目標を含める。
3)ソーシャルパーパスについて学ぶ機会を設け、チームメンバーを支援する。部門のプロフェッショナル育成予算にソーシャルパーパス教育を含める。
4)すべての職務説明書や求人票にソーシャルパーパスに対する責任項目を含める。例えば、「企業のソーシャルパーパスの実行を支援する」などと記載する。
5)新しいプロジェクトやイニシアチブを始める時には、自社のソーシャルパーパスが業務範囲にどう影響するのか、新たなプロジェクトやイニシアチブが社会への恩恵をどう生み出すのかを明確にする。
6)企業のソーシャルパーパスを浸透させ実行するために、部門の目標を毎年決める。
7)他の部門やチームにもソーシャルパーパスを共有するようメンバーを後押しし、自らも全社に対しソーシャルパーパスを提起する。
8)ソーシャルパーパスにまつわるストーリーを組織に定期的に共有し(イントラネットや社内報が理想的)、成功事例や課題、教訓を伝える。ソーシャルパーパスの実行とは何かを他の人たちが理解するに役立つだろう。
9)重要な会議で“ソーシャルパーパスの時間”を設け、人々を鼓舞するようなソーシャルパーパスの経験を共有する。

4 ソーシャルパーパスに取り組むために、自社を取り巻く体制を整える
1)自社と関わりのある職能団体に、従業員向けのパーパス教育を提供できないか聞いてみる。もしリソースがあるなら、ソーシャルパーパスについてのウェビナー講座や研究論文の後援を申し出る。
2)ソーシャルパーパスを取り入れ、社会をより良くするために職能団体に働きかけ、支援する。またその団体とリソースを共有する。
3)既存のサプライヤーやベンダー、請負業者にソーシャルパーパスがあるかを尋ねる。ある場合は、調達文書に記載してもらうよう依頼する。
4)実用的なパーパスを統合するための取り組みを社内外に積極的に共有する。公の場で伝える機会を見つけ、ソーシャルパーパスを採用するよう団体に働きかける。
5)ソーシャルパーパスに基づいたビジネスキャリアを積み重ねていくことを後押しするべく、企業のリーダー層や同僚とツールを共有する。

5 個人のパーパスを決める
1)パーソナルパーパスは、あなたがどんな人であるかを定義するのに役立つ。そこに自らの情熱や価値観を反映させる。人生のパーパスを要約する文章やフレーズを書いてみる。自らのパーパスは時間と共に変化する可能性があることを認識しながら、定期的にパーパスに立ち返る。
2)自身のパーパスを同僚にも共有し、同僚にもパーソナルパーパスを定めるよう勧める。

6 パーパス・ドリブン・リーダーとしてキャリアを積む
1)ソーシャルパーパスへの理解を深め、自社のパーパスの実現に尽力したなら、職務履歴に新たな知識やスキル、経験を加えることができ、昇進を目指す際にも経歴の一つとして紹介できる。
2)ソーシャルメディアを活用し、ソーシャルパーパスの実装に取り組んだ経歴をLinkedInのプロフィールに追記したり、ソーシャルパーパスに取り組むリーダーや組織をフォローする。

ソーシャルパーパス・プロフェッショナルの“お手本”は多い。そうした人たちは情熱を持ってパーパスを推進し、組織やその枠を超えてパーパスエコノミーを推進するために個人の影響力を高めている。例えば、カナダの通信大手テラス(TELUS)の公共政策チームで政府関係のリーダーを務めるトム・チャーヴィンスキー氏は、他のソーシャルパーパス企業に対し、カナダをソーシャルパーパス・ビジネスのハブにするための政府のキャンペーン活動に参加するよう呼びかけた。同氏は、そうすることが自社や関係するコミュニティの繁栄に役立つと考えている。また、自社のパーパス(テクノロジーと思いやりによって、人類の目覚ましい進歩を可能にする)に命を吹き込むためにも、ビジネスにおいてソーシャルパーパスを推進する意義のある役割を担いたいという。

自社のソーシャルパーパスや企業内での役割にかかわらず、自らのキャリアにより良い変化をもたらす方法は数多くある。ソーシャルパーパスを考えることで、皆さんは自らの仕事や人生をより満足できるものにしていくことが可能であり、また、自社がより良い世界をつくるのに役立つこともできるだろう。

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