世界の平均気温 2023年は産業革命前から1.48度上昇し観測史上最高に、パリ協定の1.5度目標に迫る――EU機関が報告

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2023年は観測史上、世界の平均気温が最も高く、産業革命前から1.48度上昇していた――。欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」が9日に発表した報告書で、2023年の世界の平均気温は観測史上最高の14.98度となり、これまでの最高値だった2016年より0.17度上回ったことが分かった。地球温暖化対策として産業革命前から1.5度以内に抑えるパリ協定の目標値ぎりぎりのラインにまで迫っている。原因について同機関は、大気中の二酸化炭素濃度も最高レベルに達するなど、気候変動の影響の増大に加え、エルニーニョ現象による海洋表面温度の上昇を挙げている。(廣末智子)

1年のうち半分は1.5度より高く、11月には2度高い日も

報告書によると、2023年は、1年間の平均気温がこれまでの最高値だった2016年より0.17度上回って14.98度となり、産業革命前の1850〜1900年より1.48度高かった。1年間のすべての日が産業革命前より1度上回ったのは観測史上初めてで、50%近い日は産業革命前より1.5度高く、11月にはこれも観測史上初となる2度高い日も2日あった。

いくつかの地球規模の気温データセットに基づく、産業革命前(1850〜1900年)と比較した1967年以降の表面大気温度の上昇を表したグラフ(Credit:C3S/ECMWF)

地域別でも、オーストラリアを除くすべての海洋流域と大陸の大部分で、記録的な高温、またはそれに近い高温となり、6月〜12月までの各月の平均気温が、前年同月を上回った。7月と8月は観測史上最も温度が高く、北半球の夏(6月〜8月)は記録的な暑さとなった。

世界の平均海面水温も異常な高水温が続き、4月〜12月にかけてこの時期としては記録的な高水温に。7月以降は南米ペルー沖の海面水温が上がる「エルニーニョ現象」が強まり、特に北大西洋で海面水温が上昇したことが要因となった。前例のない海面水温は、地中海の一部、メキシコ湾とカリブ海、インド洋と北太平洋、そして北大西洋の大部分を含む世界中の海洋熱波を引き起こした。

さらに、南極海、北極海ともに海氷域面積も記録的な低水準となり、南極海では2月に日平均・月平均ともに過去最小を記録。北極海では、3月に衛星観測史上4番目に少ない面積となった。

また、大気中の二酸化炭素濃度とメタン濃度は上昇を続け、2023年は二酸化炭素濃度が前年比で2.4ppm 高い419ppm、メタン濃度は11ppb多い1902ppbに達し、いずれも記録的な水準となった。

2023年は熱波、洪水、干ばつ、山火事など世界中で多くの異常気象が記録され、世界の森林火災による炭素排出量は、前年比で30%増加したと推定されている。

2024年も1.5度上回る可能性大 近づくタイムリミット

こうした結果について、コペルニクス気候変動サービスのカルロ・ブオンテンポ所長は「ここ数カ月に観測された極端な気候は、我々の文明が発展した時代の気候からいかにかけ離れているかを劇的に物語っている。このことは、パリ協定とすべての人類の努力に重大な結果をもたらす。気候リスクのポートフォリオをうまく管理するには、気候データと知識を活用して将来に備える一方で、経済の脱炭素化を早急に進める必要がある」と警鐘を鳴らしている。

報告書は「2024年の平均気温は産業革命前の水準を1.5度上回る可能性が高い」とも予測している。昨年末に開かれたCOP28は、すべての化石燃料の削減に言及したおよそ10年間での脱却加速で合意。1.5度目標の達成には世界全体の温室効果ガス排出量を2019年比で2030年までに43%、2035年までに60%削減する必要があり、各国が目標強化に向けて早急に議論を開始すべきことが締約国の間で確認された。しかし、現実は限りなくタイムリミットに近づいており、危機的な気温上昇の現状を踏まえ、各国政府や各産業、企業の小手先でない本格的な対応が求められている。

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