「ゼロゼロ融資」利用後の倒産 2023年は631件で前年の約1.4倍 2020年7月からの累計は1,216件

2023年「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況

2023年の「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」利用後の倒産は631件(前年比39.2%増)で、前年の約1.4倍に増加した。2023年は毎月40件超のペースで推移し、3月には集計を開始以来、最多の63件発生した。返済開始を迎え、借換支援も打ち出されたが、業種の幅を広げながら増勢を持続している。
初めて倒産が発生した2020年7月から3年半の累計は1,216件に達した。

2023年のゼロゼロ融資を利用後の倒産は、産業別は飲食店(84件)を含むサービス業他が最多の221件(前年比67.4%増)で、全体の3割超(構成比35.0%)を占めた。コロナの5類移行後、人流回復とインバウンド需要の増加で客足は戻ってきたが、食材費や光熱費の高騰、人手不足に伴う賃金上昇などのコストアップが経営を直撃した。
政府はゼロゼロ融資等の返済負担軽減のため、2023年1月から事業者への新たな支援策として「コロナ借換保証」制度を開始した。また、金融機関には貸出先の実情に応じた経営改善や事業再生支援への取り組みを促し、先を見据えた対応を求めている。
しかし、金融機関の人的リソースにも限界があり、支援に濃淡が生じかねない。足元ではコスト上昇で採算が悪化し、過剰債務から脱することが出来ない企業も少なくない。こうした企業は追加の資金調達が難しく、返済猶予(リスケ)を繰り返し資金繰りを維持しているのが実状だ。
2024年4月には民間金融機関で扱ったゼロゼロ融資の返済が再びピークを迎える。元本返済と利払いで資金繰りが一段と厳しくなる企業の増加が懸念されている。同時に、コストアップへの打開策が見つからないなか、業績回復が進まず賃上げ余力の乏しい中小・零細企業に実効性ある支援が重要になっている。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


2023年の「ゼロゼロ融資」利用後倒産は前年の約1.4倍、3月には過去最多の63件発生

2023年のゼロゼロ融資を利用後の倒産は631件(前年比39.2%増)だった。3月には、集計開始以来最多の63件が発生した。民間金融機関の返済開始が最初のピークを迎えた7月前後は約60件の高水準で推移しており、今年4月に迎える返済ピーク前後の動向から目が離せない。
負債総額は1,452億5,700万円(同22.9%増)で、2月は過去最大の188億1,900万円にのぼった。ただ、11月以降は100億円を割り込み、小・零細企業の行き詰まりが多いことを示した。

【産業別】サービス業他が3割超

産業別では、サービス業他が221件(前年比67.4%増)で最多、全体の3割超(構成比35.0%)を占めた。
次いで、建設業128件(前年比56.0%増)、卸売業84件(同15.0%増)、製造業83件(同9.2%増)、小売業56件(同30.2%増)、運輸業29件(同9.3%減)、情報通信業20件(同185.7%増)、不動産業7件(同40.0%増)、農・林・漁・鉱業3件(同50.0%増)の順。金融・保険業(前年1件)は発生しなかった。
10産業のうち、8産業で増加、2産業で減少した。

【業種別】飲食店が84件で最多

業種分類別(中分類)は、「飲食店」が84件で最多。コロナ禍の業況不振で財務内容が悪化したところへ、食材費や人件費、光熱費が上昇。コストアップに耐え切れず事業継続を断念したケースが目立つ。
次いで、「総合工事業」61件、「職別工事業」42件が続く。資材の高騰や調達難に加えて、人手確保難にも見舞われ、受注機会を逸するケースもあった。
このほか、燃料費高騰の煽りを受けた「道路貨物運送業」が22件発生した。

【形態別】破産が9割

形態別では、破産が572件(前年比34.9%増)で、9割(構成比90.6%)を占めた。特別清算10件(前年比66.6%増)と合わせた『消滅型』倒産は582件(同35.3%増)発生した。
『再建型』倒産は、民事再生法が10件(同150.0%増)発生、会社更生法は前年と同様に発生しなかった。
このほか、取引停止処分が36件(同100.0%増)で倍増した。

【従業員数別】10人未満が約8割

従業員数別の最多は、5人未満の330件(前年比63.3%増)だった。次いで、5人以上10人未満が149件(同46.0%増)が続き、10人未満の小規模倒産は合計479件で約8割(構成比75.9%)を占めた。構成比は前年の67.1%より8.8ポイント上昇した。
このほか、10人以上20人未満が93件(前年92件)、20人以上50人未満が44件(同42件)、50人以上300人未満が14件(同15件)、300人以上が1件(同ゼロ)。10人以上の各レンジでは、前年とほぼ拮抗し、小規模化が鮮明となった。

【地区別】関東地区が4割占める

地区別では、最多は関東の271件(前年比77.1%増)で4割(構成比42.9%)を占めた。次いで、九州92件(前年107件)、近畿66件(同44件)、東北61件(前年同数)、中部46件(同40件)、中国37件(同10件)、北海道29件(同23件)、四国18件(同5件)、北陸11件(同10件)の順。
都道府県別では、東京都が141件(同75件)で最多。福岡県55件(同40件)、埼玉県48件(同40件)が続き、鳥取県、大分県、長崎県を除いた44都道府県で発生した。

© 株式会社東京商工リサーチ