2023年の負債1,000万円未満の倒産495件 3年ぶりに増加も、400件台の低水準にとどまる

2023年(1-12月)「負債1,000万円未満」倒産状況

2023年の負債1,000万円未満の企業倒産は、495件(前年比20.7%増)で、3年ぶりに前年を上回った。負債1,000万円以上の倒産が増勢を強まるなか、同1,000万円未満の倒産も増加した。
コロナ禍で痛手を受けた小・零細企業の倒産が2020年は630件と急増したが、その後のコロナ関連支援で急激に減少をたどった。しかし、支援策の終了・縮小とともに、事業規模を問わず過剰債務に陥り、経営に行き詰まる企業の多いことを示している。

産業別では、サービス業他が229件(前年比20.5%増)で、負債1,000万円未満の倒産の4割超(構成比46.2%)を占め、突出している。サービス業他の業種では、食堂,レストラン(21件)、経営コンサルタント業(16件)、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所(14件)、酒場,ビヤホール(10件)など、小資本で開業可能な業種が多い。
原因別では、最多が販売不振の366件(前年比33.0%増、構成比73.9%)。資本金別では、1千万円未満(個人企業他を含む)が463件(同19.6%増、同93.5%)と9割強を占めた。
形態別では、破産が480件(同18.8%増、同96.9%)と大半を占めている。

負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業がほとんどを占める。経営資源が限られているため、業績が低迷すると経営再建は容易ではなく、破産による債務整理を選択するケースが多い。
コロナ禍から経済活動は本格的に再開しているが、ウクライナ情勢や円安などに伴う物価高騰、人手不足、人材確保のための人件費上昇など、さまざまなコストアップが収益を圧迫している。
さらに、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)の返済開始など、資金負担は増している。

政府は、金融機関に企業の再生支援に取り組むことを求めているが、負債1,000万円未満の企業は小・零細企業が中心で、支援が行き届かないケースが少なくない。また、金融機関も人的リソースに限界を抱えている。このため、支援の網からこぼれた企業にも再生ファンド等を含め、官民一体の支援整備が求められる。

※本調査は、2023年(1-12月)に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。


2023年の倒産495件、3年ぶりに前年を上回る

2023年の負債1,000万円未満の倒産は495件(前年比20.7%増)で、3年ぶりに前年を上回った。
2023年は3月、4月を除く10カ月間、前年同月を上回り、増勢が鮮明となった。
また、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)の返済が本格化する中、物価高や人材確保のための人件費上昇などのコストアップで、企業の資金負担は増大している。
小・零細企業では、こうした資金負担を吸収するだけの収益力は乏しく、今後も小規模倒産が増勢をたどる可能性は高い。

【産業別】最多がサービス業他の229件、構成比は4割を超える

産業別は、10産業のうち、建設業と金融・保険業を除く、8産業で前年を上回った。
最多がサービス業他の229件(前年比20.5%増)で、3年ぶりに前年を上回った。構成比は46.2%(前年46.3%)と半数近くを占めた。
このほか、不動産が14件(前年比27.2%増)が2年連続、運輸業が19件(同137.5%増)で2年ぶり、農・林・漁・鉱業8件(同33.3%増)と製造業21件(同5.0%増)、卸売業40件(同53.8%増)、情報通信業23件(同15.0%増)が3年ぶり、小売業が64件(同42.2%増)で5年ぶりに、それぞれ前年を上回った。
一方、建設業は75件(同7.4%減)で2年ぶり、金融・保険業が2件(同33.3%減)で4年ぶりに、それぞれ前年を下回った。

業種別では、食堂,レストランが21件(前年13件)、経営コンサルタント業が16件(同10件)、
あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所が14件(同5件)、一般貨物自動車運送業が10件(同3件)、バー,キャバレー,ナイトクラブ(同6件)と自動車一般整備業(同2件)が各7件、貨物軽自動車運送業(同3件)と無店舗小売業(同4件)が各6件などで、前年を上回った。

【形態別】破産が9割を超える

形態別は、最多が「破産」の480件(前年比18.8%増)で、構成比は96.9%(前年98.5%)。
2023年の破産は、月次構成比は1月、2月、5月、6月、7月、9月、10月、11月の8カ月で100.0%だった。負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業がほとんどで資金的・人的な制約から自力で経営再建への取り組みは難しく、消滅型の破産を選択している。
「特別清算」は5件(前年比400.0%増)で、2年ぶりに前年を上回った。
再建型の「民事再生法」は4件(同33.3%増)で、3年ぶりに前年を上回った。「会社更生法」は、2009年以降の15年間では発生がなかった。
「取引停止処分」は6件(同200.0%増)で、5年ぶりに前年を上回った。

【原因別】販売不振が約7割

原因別は、最多が「販売不振」の366件(前年比33.0%増)で、3年ぶりに前年を上回った。構成比は73.9%(前年67.0%)だった。
このほか、「他社倒産の余波」が42件(前年比5.0%増)で2年連続、代表者の病気や死亡を含む「その他」が25件(同8.6%増)で2年ぶりに、それぞれ前年を上回った。
一方、「事業上の失敗」31件(同8.8%減)と「運転資金の欠乏」7件(同41.6%減)が2年ぶり、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が17件(同10.5%減)で2年連続で、それぞれ前年を下回った。
負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業が多く、資金余力も乏しいだけに、販売不振から抜け出すことはなかなか難しい。

【資本金別】1千万円未満が9割超

資本金別は、1千万円未満が463件(前年比19.6%増)で、3年ぶりに前年を上回った。構成比は93.5%(前年94.3%)で、0.8ポイント低下した。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が183件(前年比18.8%増)、「個人企業他」が155件(同19.2%増)、「1百万円未満」が78件(同18.1%増)、「5百万円以上1千万円未満」が47件(同27.0%増)だった。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が32件(同39.1%増)で、3年ぶりに前年を上回った。
一方、「5千万円以上1億円未満」が2年連続、「1億円以上」が4年連続で、それぞれ発生がなかった。

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