なり手不足が深刻、兵庫の「民生委員」欠員754人 震災後最多 虐待、ひきこもりなど対応事案は多様に

神戸新聞NEXT

 地域福祉を支え、阪神・淡路大震災の発生時には住民の安否確認などを担った「民生委員」のなり手不足が深刻化している。兵庫県内では定数1万311人に対し、欠員は都市部を中心に震災後最多の754人に上る。見守りが必要な高齢者が年々増える中、南海トラフ巨大地震など次の大災害に対応する「共助」の力は厳しい局面にある。

 民生委員は3年に1度の一斉改選があり、直近は2022年12月。欠員の増加は全国的な傾向で、全都道府県の定数約24万人に対し、欠員は約1万5千人を数え、「戦後最多とみられる」(厚生労働省)。充足率は93.7%。

 兵庫県の充足率は全国を少し下回る92.7%。中でも西宮市82.6%(欠員128人)▽尼崎市88.9%(同95人)▽神戸市90.5%(同244人)-など、都市部での不足が目立つ。改選時期ごとの推移では、欠員数は増加、充足率は減少の一途をたどっている=グラフ。

 震災発生時はどうだったか。神戸市の場合、直前の1995年1月1日時点で定数2047人に対し、欠員は24人。充足率は98.8%だった。兵庫県(神戸市を除く)でも当時の充足率は99.8%と極めて高く、地震後は民生委員が住民の安否確認、仮設住宅の戸別訪問、相談窓口の開設といった活動に奔走した。

 しかし、この29年で民生委員を取り巻く状況は大きく変化した。高齢の委員が引退した後も後継者が見つからない。働くシニアが増えたことも、なり手不足の一因という。また、児童虐待やひきこもり、ヤングケアラーのいる世帯など対応事案は多様化。委員になっても長続きしないケースもあり、県の担当者は「(県所管地域では)改選時の新任は4割以上」と明かす。

 神戸市では、民生委員が「見守り台帳」を作成しているが、掲載対象の単身高齢者や高齢者のみの世帯は今後一層の増加が見込まれている。市は大学生が民生委員活動を体験するインターンシップを実施するなど将来のなり手確保に努めている。(中島摩子)

【民生委員】1917年、岡山県で生まれた「済世顧問制度」が始まり。厚生労働省から委嘱された特別職の地方公務員で、地域住民の相談に応じ、適切な支援につなぐ役割を担う。児童委員も兼ねる。無報酬だが、活動費として国から1人年6万200円が交付される。自治体によって独自に上乗せがあり、支給額は異なる。

© 株式会社神戸新聞社