新春から祝いの席に緊張感…神奈川のタクシー協会幹部、ライドシェア全面解禁に危機感表明

賀詞交歓会であいさつする県タクシー協会の伊藤宏会長=15日、横浜市西区

 神奈川県タクシー協会の賀詞交歓会が15日、横浜市内のホテルで開かれた。話題は昨年急浮上した一般ドライバーが自家用車を使い有償で送迎する「ライドシェア」一色に。政府は昨年12月、タクシー会社が運行管理し、車両不足が深刻な地域や時間帯に絞って限定解禁する「日本版ライドシェア」の導入方針を発表。県も同様の枠組みで夜間の移動手段が乏しい三浦市で実施を目指す。旗振り役の国会議員や知事が意義を強調する中、協会幹部は全面解禁への危機感を表明。新春の祝いの席には緊張感も漂った。

 「ドライバー・従業員と家族の生活を守るため、ライドシェアと称する白タク行為の断固阻止」-。演壇両脇にそう大書された垂れ幕が下がる中、協会の伊藤宏会長(神奈川都市交通社長)は会員や来賓を前に「私たちの今の思いを表している」と力を込めた。

 国内でのタクシー営業開始から110年余りの歴史を引き「旅客の安全と良質なサービスで公共交通機関としての使命を果たしてきたが、落城しかねない危機が迫っている」とも言及。ライドシェアが全面解禁されれば「運賃の価格破壊を招き、業界にとって死活問題となる」と危機感をあらわにした。

 タクシー会社が管理する限定的なライドシェアに適切に対応することで「最後の一線」とし、新規参入を含む全面解禁への議論を強くけん制した形だ。 

© 株式会社神奈川新聞社