能登の酒蔵存続へ正念場 震災で壊滅、深刻被害

被災前(上)と被災後の桜田酒造=石川県珠洲市(上は同社提供)

 能登半島地震で大きな被害が出た半島北部「奥能登」では地元の酒蔵も壊滅的な被害を受けて酒造りができなくなり、正念場を迎えている。日本四大杜氏の一つの「能登杜氏」を輩出してきた伝統文化にとって深刻な事態。「生活だけで手いっぱい」という担い手の悲鳴を受け、地元の業界団体は義援金の募集を始めた。

 石川県輪島市の「中島酒造店」は、原形が分からないほどに蔵や店舗が全壊。タンクに残っていた酒は、がれきの下だ。社長の中島遼太郎さん(35)は26歳で父親を亡くし、後を継いだ。「やっと軌道に乗ってきたところだった」と力なく笑った。

 遅くとも明治元年から酒造業を営む。代表銘柄「末廣」は辛口で香りが豊かなのが特徴だ。

 1日、自宅で被災。崩れ落ちる家から母親を救助し避難した。「飲んでくれる人の笑顔が支えだった」。わずかに被災を免れたスペースに寝泊まりする。「生き抜くので精いっぱい。自力の再建は無理。岐路に立っている」と吐露する。

 珠洲市の「桜田酒造」も、店舗や仕込み蔵など建物全てが倒壊。瓦や割れたガラスが散乱し、日本酒の香りが、かすかに漂っていた。

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