連続殺人事件をモーガン・フリーマンがスピード解決!猟奇スリラー映画『ブラッド・チェイサー 呪術捜査線』は“『セブン』2周目”かのような手際の良さに注目

『ブラッド・チェイサー 呪術捜査線』DVD発売中価格:4,180円(税込)/3,800円(税抜)発売元:彩プロ販売元:TCエンタテインメント©2022 Iervolino & Lady Bacardi Entertainment S.p.A. All Rights Reserved.

「モーガン・フリーマンが隣にいる映画」は大体おもしろい

モーガン・フリーマンのようなおじいちゃんになりたい。知的で上品な話し方、そして全てを包み込むような笑顔。古くからハリウッドの

・最優秀 敬いたい老人部門
・隣に住んでいて欲しいおじいちゃん部門
・甘えたいお年寄り部門

のトップといえばモーガン・フリーマンだった。実際、『ショーシャンクの空に』(1994年)、『セブン』(1995年)、『ダークナイト』シリーズ(2008年~)、そして『最高の人生のはじめ方』(2012年)など、モーガン・フリーマンが“主人公の隣にそっといる映画”はだいたいおもしろい。

モーガン・フリーマンが隣にいてくれる――それだけで絶対的な安心感が生まれる。「フリーマン」というのも俺が知る限り最高にカッコいい名字の一つだ。

今回は、そんな彼の最近の主演作から『ブラッド・チェイサー 呪術捜査線』(2022年)を紹介したい。

モーガンのフリーマンっぷりがMAX!『ブラッド・チェイサー 呪術捜査線』

正直に言うと、そのタイトルから不安な予感がしまくっていたのだが、実際のところモーガンのフリーマンっぷりがMAXな作品だった。いわばモーガン・ストライクフリーマン・デスティニーな一本だった。

本作でモーガンが演じるのは、大学でアフリカ民俗学を教えるマックルズ教授。「今の時代スマホで何でも調べられる」とホザく生徒の挑発にも乗らず、柔らかく説き伏せる紳士だ。

あるときアメリカ・ミシシッピ州にて若者が犠牲となる連続誘拐殺人事件が発生。殺人課の刑事ボイド(コール・ハウザー)が、この事件を担当することになる。

このボイド刑事、かつて事故によって娘を目の前で亡くすというトラウマを抱えており、一切抵抗していなかった犯人を勢いで射殺するくらいにメンタルが不安定だ。

連続殺人事件ならモーガン・フリーマンの得意分野だ!

劇中で発生する連続殺人事件の概要だが、被害者は少年少女。事件の現場には何か儀式を行ったような跡があり、遺体は身体の一部が切り取られている異様さだった。

現場の痕跡から、アフリカの黒魔術が関係しているという推測がなされる。そこでボイド刑事は、アフリカ民俗学の権威であるマックルズ教授に協力を依頼する、というわけだ。

連続殺人事件ならモーガン・フリーマンの得意分野だ。引退間近のベテラン刑事サマセットを演じた『セブン』では映画史に残る最悪な事態に発展したが、あれから30年近く経過している。モーガンはもう振り回されない。

・犯人は祈祷師
・政治家やビジネスマンなどを顧客にしたアフリカ古来の黒魔術を営んでいる。
・生贄の悲鳴が強烈で若者であるほど効果が増す。

と、適格かつスピーディーに事件を紐解いていくモーガン。頼もし過ぎるだろう……。それまで得体の知れない不気味さに包まれていた事件が、教授のアドバイスで一気に前進。もし『セブン』の頃にこの捜査能力があれば、まだ誰も殺していないケヴィン・スペイシーを逮捕できたかもしれない。

その後もメンタルは不安定だが、仕事はきっちりこなすし捜査も安定しているボイル刑事の手腕とマックルズ教授のサポートにより、連続殺人祈祷師に仕事を依頼したのが南アフリカの実業家であることも判明。もっとも、犯人と確定する前にボイル刑事が勢いで自宅に殴り込んでしまうあたりも見どころだ。

願掛けのために連続殺人なんて起こされたら、たまったもんじゃない。神社に行って賽銭箱に万札でも投げろやと思ってしまうが、そんな中で新たな誘拐事件が発生する。

緊張が走る中、マックルズ教授の「儀式をするなら絶対あのへん!」という断言を信じて現場へ直行する二人。そして見事正解!! ボイル刑事とマックルズ教授は、ついに犯人と対峙する――。

まるで『セブン』2周目プレイかのような安心感

やっぱりモーガン・フリーマンがいると安心する。猟奇殺人事件なのにサクサク捜査が進むので、彼の他の出演作のような安心感がある。

サイコホラー/サスペンスで安心させてどうする! !という声が聞こえてきそうだが、世の中には俺のように、怖い映画の場合はできるだけ事前に情報を入れるなり安心した状態で観たい人間もいることを知ってほしい。

それにしても、まるでテレビゲームを一度クリアした後の2周目プレイかのような手際の良さだった。映画としての関連性はさっぱりないが、どうか本作とあわせてサイコホラーサスペンスの金字塔『セブン』も観て欲しい。

マックルズ教授の正体が、刑事を引退したサマセットだったと考えれば合点がいく。「二度とブラピを悲しませない」と言わんばかりに再発防止を徹底してきたのだろう。

事件の捜査中、マックルズ教授は「アフリカの一部の部族の慣習で、身内が他の部族に多大な迷惑をかけたら族長は謝罪の印として、そいつを殺して体の一部を贈らないといけない」と物騒なことを呟いたりするが、最後の最後で覚醒。『セブン』とは全く違うベクトルで衝撃的な結末を迎える。とんでもない展開に、思わず巻き戻してもう一度確認してしまうほどだった。

御年86歳のモーガン・フリーマン。年齢的に健康面が心配だが、見たところ元気いっぱいだ。長生きしてね。

文:デッドプー太郎

『ブラッド・チェイサー 呪術捜査線』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年1月放送

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