茨城県内も薬品不足 供給不十分が慢性化 能登地震被災も懸念

せき止めなど薬品の不足が深刻化している

せき止めや抗菌剤など薬品不足が長引き、茨城県内の薬局にも影響が出ている。後発薬(ジェネリック)の会社の相次ぐ不祥事で供給不足が慢性化。さらに製薬各社が集まる北陸地方で発生した能登半島地震で生産拠点が被災した影響も懸念が増す。茨城県内の薬局関係者からは「いつ提供できなくなってもおかしくない」と心配する声も聞かれる。

不足が続くのは、せき止め、たんを切る薬、抗生剤など身近な薬品。県は昨年12月14日、インフルエンザの流行警報を発令した。感染は夏場から拡大。さらに新型コロナウイルス、夏風邪、溶連菌感染症の広がりも重なった。

県薬剤師会によると、薬の供給不足は約3年前から始まり、「大きな要因は他にある」とする。

福井県のジェネリック医薬品メーカーで製造を巡り不祥事が発覚。以降、業務停止などの処分を受けた企業が相次いだ。さらに新型コロナの世界的な感染拡大に伴う薬の争奪戦、円安による買い負け、薬価改正による価格低下など「要因は複合している」(同会)。

茨城県内を含め全国に約400店舗を展開する「アイセイ薬局」の泉圭樹北関東支店長は「いつ薬を出せなくなってもおかしくない。一刻も早く元の状態に戻ってほしい」と訴える。現在は連日のようにグループ内や他の薬局と融通したり、1錠を半分に切って小児用の処方に充てたりするなど、何とかやりくりしているという。

日本薬剤師会が行った昨年10月の全国調査(643薬局対象)によると、薬の供給不足に伴い「負担感が悪化している」と回答した薬局は86%に上った。在庫管理のほか、発注や納品、患者や医師への説明など対応が増えているという。

医療現場では薬局をサポートする動きもある。丸山小児科(水戸市)の丸山剛志院長は「薬確保のため薬局が頑張ってくれている」と指摘。処方せんでは、せき止め薬などの分量を調整するなど「不足を意識している」と話す。

能登半島地震で被災した北陸地方には製薬各社の生産拠点が集まっている。地震で建屋や設備が壊れ、再開時期が決まらない工場もある。各社は出荷への影響を抑えるため復旧を急いでいる。

県薬剤師会は「薬の不足は国民の健康に影響する問題」と指摘し、薬価改定について「医薬品メーカーの製造意欲をそがないよう、慎重な判断を求めたい」としている。

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