視野は5円玉の穴ほど… 網膜に異常が生じる難病と診断されたアスリート「見えづらさより記録伸ばす楽しさ」

光を感じる網膜に異常が生じる、国指定の難病と診断されたパラアスリートがいます。高いレベルに身を置きながらも競技を楽しみ、今年開催されるパリパラリンピックの頂を目指しています。

石山大輝(だいき)選手、23歳。愛媛県松山市出身で、順天堂大の大学院に通いながら走り幅跳びなどで活躍する、パラアスリートです。

去年4月の日本パラ陸上選手権では、7m7cmの日本新記録をマークしました。さらに10月には、中国で行われた杭州アジアパラ競技大会の100mと走り幅跳びに出場するなど、今や国内敵なしです。

中学から陸上に取り組む石山選手は、高校1年の時網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)と診断されました。光を感じる網膜に異常が生じる国指定の難病で、国内では4000人~8000人に1人程度が発症すると報告されています。

「人差し指、中指、薬指を出して中指を見た時に、人差し指と薬指は見えないんですよ。見えているところ、中心部分は割とクリアに見えています。足元が見えづらかったりとか、人込みのところだと完璧に人を視認するのが難しかったりっていうことはあります」

視野は5円玉の穴ほど。明るさにも左右され、症状が進行すれば失明することもあります。

現在、パラ陸上で2番目に障がいが重いT12クラスで戦う石山選手ですが、競技転向は2022年のことでした。

「中学の頃から目が悪いこと自体は淡く思っていたので、できているから大丈夫なのかな、ハンデではないのかなと思ってはいたんですけど、受診したら指定難病ですよって言われたので…」

陸上を始めた中学時代にも見えづらさは感じていたものの、1人で記録を伸ばす楽しさの方が上回っていました。新田高校で始めた三段跳びでは、インターハイにも出場しました。

ただ、病は徐々に進み…

「落ち込んでる時間、もったいないなって思って」

聖カタリナ大学3年生でパラ陸上へ。パラリンピック種目にある走り幅跳びへの挑戦を決めたのです。

そして2023年春、さらに己を高めるため順天堂大学大学院に進み、愛媛を離れ千葉で1人暮らしをしています。

「1人暮らしはやったことがないので不安かな。知らないことへの恐怖があっただけで、物の位置とかわかっていれば、そのハードル自体は普通の大学生と変わらないかな、と」

「暗さはすごく弱い」と話す石山選手。外出を伴う用事は日中に行い、夜は避けています。そのため、陸上部での練習は午前中、講義は夕方以降にオンラインで受けます。

受講内容が競技にも活かされています。

「どういうふうにトレーニング積んだらこういった能力が伸びますよね、とか、競技につなげていけるような授業をとったりとか」

石山選手が所属する順天堂大陸上部は、多くのオリンピアンを輩出している名門です。そうした中でも、石山選手への期待は大きいようです。

順天堂大学陸上競技部 青木和浩監督 「まったく障害をもっているっていうのを感じさせないくらいの選手で、何事に関しても彼は真摯に向かいますし、うちの大学にいるアスリートの中でもとっても前向き、そのポジティブさが彼の良さかなと思ってます」

2024年は、1つの集大成。

石山大輝選手 「しっかり出場権を獲ることが1個大きい目標で、出場できますとなった時には世界4位を経験しているので、それより上を狙っていかないといけないと思う。しっかり自分の中ではメダルが獲れればいいかなと思っています」

今年5月、神戸市で行われる世界選手権で、好成績を残せばパリへの道が近づきます。

夢舞台、パリパラリンピックでメダル獲得へ。勝負の2024年です。

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