「政治とカネ」「派閥問題」議員票、政治資金…派閥のメリットは? そもそも政治に派閥は必要? 専門家が解説

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。1月11日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「政治とカネ、派閥の問題」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
(※放送当時の内容です)

※写真はイメージです

◆政治不信を払拭するための「政治刷新本部」設置のはずが…

自民党は派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、再発防止策などを検討するため「政治刷新本部」の設置を決めました。その上で、再発防止策や政治資金の透明性の拡大、派閥のあり方に関わるルール作りなどの議論を深め、国民の信頼回復を図る考えを示しました。

ユージ:派閥のあり方について、国民の関心も高いと思います。まず、自民党派閥の政治資金パーティーを巡る問題、現状はいかがでしょうか?

塚越:まず1月7日(日)、東京地検特捜部が、安倍派の衆院議員である池田佳隆容疑者を逮捕しました。2022年までの5年間で、パーティー収入計4,826万円を政治資金収支報告書に記載しなかった疑いです。

これまでの報道のなかでも金額が大きく、関係者のLINEのやり取りを削除するなど、悪質な証拠隠滅工作があったという指摘もあります。

池田氏は2012年当選のいわゆる“安倍チルドレン”と言われています。パーティー権を売るのが上手な人だったと伝えられていますが、事件発覚後は地元にも姿を見せず「雲隠れ」していました。

他に誰が逮捕されるか? という報道の一方で、自民党は自ら政治改革を議論する「政治刷新本部」の初会合を1月11日(木)に開催。最大の焦点は国民が納得できる形の改革ができるかどうかですが(メンバー38人のうち安倍派所属議員は10人が起用されました。そのうち9人の国会議員に、政治資金パーティー収入の一部を政治資金収支報告書に記載しなかった疑惑が浮上しています)。

「刷新」のイメージには乏しく、野党からも派閥そのものを廃止する議論を、という声も上がっています。

ユージ:刷新と言われると、「全く新しいもの」にするというイメージもあるので今回の「政治刷新本部」で、それを感じられるか? というと、確かに何とも言えませんよね。

◆そもそも政治における「派閥」とは?

吉田:そもそも政治の世界で“派閥”とは、どういった存在でしょうか?

塚越:派閥は、明確に「このリーダーの下で活動する」と明言して、他の派閥のリーダーを推すことがないのが特徴です。信頼している人や議員になるときにお世話になった人の派閥に入ることもあるほか、世襲議員の場合は親の人間関係のなかで決まったりもします。そういう意味では、「政策集団」かもしれませんが、やはり人間関係で動いていると思います。

ユージ:派閥のメリットは何かありますか?

塚越:派閥のメリットと役割は主に「4つ」あるといわれています。個人的には全て「カネや人間関係からくるメリット」だと思います。

まず1つ目は、国政選挙ではなく党の「総裁選挙」を左右する「議員票」です。自民党の総裁は、ほとんどの期間で日本の総理大臣になっているので、派閥のリーダーを総理大臣にするための票が重要になります。

とはいえ、1つの派閥では過半数を取れない場合は、他派閥からの支援をしてもらうこともあるので、派閥といっても実際は「自分のリーダーを総理に」という単純なものではありません。

2つ目は「国政選挙」です。派閥の先輩議員が選挙の応援演説に来てくれたり、仲間同士で助けあったりするということ。

3つめは「政治資金」、要するに「カネ」です。政党だけでなく、選挙の際は派閥からもお金が出ます。最近は減ってきたとのことですが、季節ごとの資金もあったりします。

4つ目は「大臣ポストの配分」です。例えば岸田内閣でも、各派閥にポストを渡して、派閥から人を推薦させていました。特定の政策能力のある人を大臣にすることもありますが、結局は派閥という人間関係のなかで大臣ポストが配分されることもしばしばあります。

こうやって見ていくと、政治家個人の能力というより、人間関係にかなり依拠しているな、と私は思います。

◆リクルート事件以降、“うやむやのまま”残った派閥

ユージ:塚越さんは、政治に派閥は必要だと思いますか?

塚越:どうなのかなと思います。もともと1988年の「リクルート事件」があってから、「平成の政治改革」というものがありました。細かい点は省きますが、それまで派閥争いでお金がかかり、各政党が政治資金集めをしなくても済むよう、年間300億円の「政党助成金」制度を使い、将来的に企業や団体の献金を禁止する予定で進んでいました。

つまり、派閥はこれで存在意義の大部分を失うはずだったのに、結局うやむやのまま今まで残っており、政党助成金の300億円は残っているということで、30年経っても変わっていないどころか、さらにお金が入っている状態になります。

今に始まったことではなく、平成初期にやろうとしていたことができていない。「今、行動してくれ」と、怒りが出ています。これに対し、第三者機関も入ってどんどん変えていくということで、逆にそれをしていかないと、自民党としても続かないと思います。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ

\----------------------------------------------------
1月11日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2024年1月19日(金) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
\----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

© ジグノシステムジャパン株式会社