ラスベガスの経営者グループがF1に補償を求める。グランプリ開催に伴う工事などで事業が混乱、減収に繋がったと主張

 ラスベガスの事業経営者グループは、昨年11月のF1ラスベガスGPの準備中に被った損失に対する補償をF1に求めている。経営者らは、ラスベガスGP開催に伴う工事や道路閉鎖により事業に重大な混乱が生じたことが収益の減少につながり、またF1とクラーク郡政府が彼らの懸念に適切に対処しなかったと主張している。

 F1は自身でラスベガスGPのプロモーターを務め、ラスベガスGPプロジェクトを少なくとも10年間支援すると確約して推定5億ドル(約730億円)を投資した。レースウイークは、木曜日に波乱含みのスタートを切った。カルロス・サインツ(フェラーリ)のマシンが巻き込まれたウォーターバルブカバーのインシデントを受けてFP1が中止となり、FP2は無観客行われるなどといったことがあったが、レース当日は大きな成功を収めた。

2023年F1第22戦ラスベガスGP ラスベガス・ストリップ・サーキット

 それでもなお、名乗り出たラスベガスの地元グループはF1に対する不満をさらけだした。この状況を非難した経営者のひとりであるウェイド・ボーンは、「我々はF1を必要としていない。F1が我々を必要としているのだ」と語った。

「我々は、F1、郡、LVCVAが行ったすべてのことによって生じた損失の補償を望んでいる」

 ラスベガスのストリップ近くに位置するボーンの事業の収益は、2022年の850万ドル(約12億4200万円)から2023年には400万ドル(約5億8400万円)強まで減少したが、その原因はF1の建設工事によって顧客が彼の店舗にアクセスすることが困難になったためだという。

「我々は、郡に責任があると考えている。彼らは税金を使ってF1を街に呼び込んでいる。F1が郡に進出したとき、彼らは妨げにならないことと、コミュニティの一員になることを約束した」

「彼らは入ってきてすべてを破壊し、レースを開催してさっさと出ていっただけだ……。来年に(この事業損失が)また発生するのなら、私は100%廃業するだろう」

 紛争に関与している他の経営者も、ボーンの懸念を共有している。F1とクラーク郡政府は建設工事の影響を軽減すると約束したが、その約束は守られなかったという。訴訟に関与している別の経営者ランディ・マーキンは、「我々コミュニティは欺かれた」と語った。

「我々はだまされた。このようなことはこれまでに一度も起きたことがない。制御できないほど強引だった」

『LVSportsBiz.com』によると、先週火曜日、数社の企業がクラーク郡委員会に出廷し、金銭的補償を求めて陳述した。

 一方F1は、建設工事の影響を最小限に抑えるためにクラーク郡政府と緊密に協力したと述べ、自社の行動を擁護し、グランプリがラスベガス地域にプラスの経済効果をもたらしたと述べた。F1の広報担当者は「このイベントがネバダ州に12億ドル(約1760億円)の経済的利益をもたらしたと考えている」と述べた。

 しかし、経営者らは依然として懐疑的だ。彼らは、グランプリによる経済的利益が彼らのビジネスへの悪影響を上回ったと述べた。

「グランプリ自体はおもしろいものだった」とボーンは語った。「しかし我々にとっては何の役にも立たなかった」

 F1はラスベガスでの長期開催に向け尽力しているが、さらなる反感を避けたいのであれば、地元コミュニティの懸念にさらに対処しなければならないだろう。F1は、F1とラスベガス市双方の利益のために、開催によってプラスがマイナスを上回るようにする必要がある。

2023年F1第22戦ラスベガスGP スタートシーン

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