「スト6」公式大会「SFL: Pro-JP 2023」グランドファイナルの観戦時に注目したいポイントをレポート!明日からマネしたいボンちゃんのジャストパリィ術を紹介

1月13日に開催された「ストリートファイター6」のカプコン公式大会「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2023 グランドファイナル」の見どころをお届け。

「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2023」とは、2023年7月から開催されていた公式リーグ戦で、1stステージでは9チームによる総当たりのリーグ戦、10月から開催された2ndステージでは上位6チームによるリーグ戦が行われた。

先日行われたグランドファイナルでは、2ndステージを1位通過したFAV gaming(以下、FAV)と、プレイオフを勝ち抜いたDetonatioN FocusMe(以下、DFM)が激突。ホーム&アウェイルール※で、90点のポイント争奪戦が行われ、結果としてはFAV gamingが90-30で勝利した。

本稿では、試合の流れ、配信視聴時にぜひ見てほしいポイント解説とともに、試合後の勝利チームインタビューをお届けする。

※ホーム&アウェイ:先鋒、中堅、大将をそれぞれ出し合い、先方・中堅戦はそれぞれ10ポイント、大将戦は20ポイントの勝利点が獲得できる。ホーム&アウェイルールでは、アウェイ側は選手のオーダーを事前に公開しなければならず、ホーム側は相手のオーダーを見てから選手を決定できるようになっている。大将まで1巡したところでホームとアウェイは入れ替わりとなる。

■入場シーン&会場の様子を写真でお届け

試合についてお話する前に、まずは会場の様子や選手入場の様子を写真でお届けしていこうと思う。

以下の画像は会場の様子だ。今回の会場では、先日コラボが行われた「きのこの山」や「たけのこの里」が無料で配布されていた。そのほか、レッドブルの売店が出ていたり、会場でお笑い芸人の「NOモーション。」との撮影会が行われていたりと、にぎやかなお祭りの雰囲気が楽しめた。

続いては、選手の入場シーン。スモークの中から壇上へ向かう選手の姿はぜひ生で見てほしいカッコよさがある。

■“最強の矛”Sakoが一閃!2ndステージの不調から脱却し最年長の意地を見せる

本大会で最も観客を沸かせた選手、それは間違いなくFAVのSako選手だろう。Sako選手は最前線で活躍するプロゲーマーの中で最年長の選手で、長年培った“操作技術”が最大の特徴だ。高難度のコンボや連携を鮮やかに使いこなし、華のあるプレイングからファンも多い。

そんなSako選手だが、2ndステージ期間はかなりの不調で、通算0勝と歯がゆい思いをしていた。

さて、そんなSako選手だったが、1巡目の中堅戦でナウマン選手に対し出陣を宣言。これには会場からも多大な歓声があがる。FAVファンはやはり、どこかSako選手の活躍を期待していたところがあるのだろう。2ndステージでの不調を払拭できるのか。観客の期待を背負ってSako選手が対戦台に座った。

ふたを開けてみれば、この日のSako選手は不調だったのがウソのようにキレキレの立ち回りを見せて、ナウマン選手に2-1で勝利を収めた。詳しい試合内容の見所ポイントについては次の見出しで解説しているので、気になった人はそちらもあわせてみてもらえると嬉しい。

以下はボンちゃん選手のリアクション集である。

続く2巡目、今度はアウェイ側となったFAVだが、ここでも中堅でSako選手が出陣。DFMの中堅・板橋ザンギエフ選手を破り、2連勝。さらに3巡目でもナウマン選手に対してSako選手が中堅で出場し、勝利を収めた。

2ndステージまでの不調がウソのように快進撃を披露し、会場を大いに沸かせたSako選手。解説のハメコ。さんも言っていたが、温厚な表情の裏に隠した“負けず嫌い”が火をつけたのかもしれない。Sako選手のファンは、グランドファイナル中堅戦をぜひチェックしてほしい。

マニアック解説#1 春麗と対空と地上戦。飽くなき向上心が垣間見えたSako選手

ここからは、Sako選手の試合について、細かな部分を解説していこうと思う。さて、今回のグランドファイナルでSako選手が快進撃を見せた理由の一つに、ジャンプしてきた相手を迎撃する“対空”が要因としてあったと思う。

細かな部分について解説する前に、春麗というキャラクターについて軽く解説しておこうと思う。春麗というキャラクターを一言で表すと、「飛び道具と一緒に攻めるオールラウンダー」といった感じだ。一見なんでもできるように見えるキャラクターなのだが、実はドライブゲージの残量にかなり気を遣うし、必殺技に長押し操作=タメを必要とするため移動すると必殺技が撃ちづらい等、意外と“近づいた後”に苦労するキャラクターであると筆者は思う。

コンボにドライブラッシュを組み込む機会が多く、ドライブゲージが枯渇しやすい。

そんな春麗が中、近距離で接近した後にリターンを得やすいのが対空と差し替えし。グランドファイナルのSako選手はこの点が非常に冴えていた。

2ndステージまで、Sako選手は対空に立ち中キックを使用していた。だが、この立ち中キックはダウンが取れず、距離によってはそこまで良い状況にならない。そこで、対空無敵のある天昇脚を使いたいところなのだが、下2回+キックという特殊なコマンドのため、とっさに出ないのがネックであった。一見簡単なコマンドに見えるが、分解して考えてみると下・ニュートラル・下と、途中にニュートラルを仲介するので対空で使いづらい、という欠点があるのだ。

試合の中で、Sako選手は途中で後ろに下がってスペースを作ってから天昇脚を狙っており、そこから起き攻めに展開するシーンが多く見受けられた。これは、天昇脚が後ろ側に弱いため、あらかじめ下がっておくことで後ろに回られないようにしつつ、後述する差し替えしが狙いやすくなるという対策だろう。天昇脚でダウンを奪ってから、しゃがみガードできない水蓮掌などの起き攻めに行く機会も多く、“最強の矛”の二つ名らしい攻めを展開できていた。

また、随所でSako選手の得意とするしゃがみ中キックを使った差し替えしからリターンが確保できており、相手が地上戦の裏を突いてジャンプしたくなるような立ち回りが展開できていたことも大きい。差し合いの距離からさらに内側に寄られたときに、無敵技を使った切り返しが刺さって流れを維持できていたのも勝因の一つだろう。

全体を通して、「やりたいことをやる。それ以外には付き合わない。」という強気なスタイルが功を奏していたようにおもう。もし、無敵技がもっとガードされていたら流れがつかめたなかった可能性も十分にあるが、差し合いなどの立ち回りでリードが取れていた分、相手が攻めなければならなかった。という体力制の格闘ゲームならではの心理的な要因があったと思う。

長く不調が続いていたが、ここ一番の勝負で大胆な立ち回りを展開して勝利を決めたSako選手。これ以上ないファンサービスだろう。

余談だが、Sako選手が意気込みコメントをするときに「ここかってボンちゃんにつなげたいと思います……あっ……。」という具合に、うっかりオーダーをばらしてしまうお茶目な一面も見せた。

■勝ちたがりTV対決!あまりにもドラマティックだった大将戦

Sako選手のほかにグランドファイナルを盛り上げたのが、ふ~ど選手とボンちゃん選手だろう。両社はそれぞれのチームのエースであり、グランドファイナルでは勝負が決まるまでの3巡とおして、お互いに大将としてぶつかり合った。

また、二人は勝ちたがりTVというYouTubeの定期番組のメンバーで、「ストリートファイターIV」時代から一緒に戦ってきた仲でもある。

1巡目では、FAV:20・DFM:0というポイント状況で、FAVが勝てばかなり優勢に進められるという状況であった。1ラウンド目こそプレッシャーからかボンちゃん選手のミスが多くふ~ど選手が流れるように取ったが、その後は割り切った強気な行動、例えば起き上がりに最速でしゃがみ中キックを撃つといった選択肢が功を奏し、文字通りもぎ取るようにラウンドを取り切った。

2巡目では、1巡目の動きを学習したふ~ど選手が、ボンちゃん選手に3-0で勝利を収めるという番狂わせを起こす。これが、DFM初めての得点であった。

3巡目では、試合の様子をスマートフォンで撮影していたときど選手がボンちゃん選手にアドバイスをおくりつつ、試合の流れは再びボンちゃん選手のペースに。ときど選手の「ドライブインパクトを撃て」というアドバイスこそ裏目に出たものの、そのほかの助言や試合を録画していたことが功を奏し、逆に3-0で勝利を収めるという非常に劇的な流れとなった。一連の大将戦は非常に見応えがあるので、注目して欲しい。

マニアック解説#2 明日からマネしたい“ボンちゃん選手のジャストパリィ攻略”

次に、試合中でボンちゃん選手が見せていた攻略が面白かったので、読者の皆と共有したいと思う。今回のボンちゃん選手、中間距離での通常技をジャストパリィする機会が多かったと思うのだが、これには「なるほど!」と舌を巻くテクニックが隠されていたのである。

種明かしをすると、以下のような順序で入力することで、ボンちゃん選手はローリスクでジャストパリィを使っていたのである。

  • 投げが届く範囲の一歩外で、連携にジャストパリィを狙う
  • 少し遅らせてドライブラッシュを入力(ボンちゃん選手は約10フレーム程遅らせていた)
  • 打撃から投げor後ろ下がりで二択をかける

こうすることによって、ジャストパリィ成功時には暗転演出によってラッシュ入力が取り消しされ、非成功時にはラッシュ入力によってパリィの隙が消される。という仕組みだ。

本来、前2回入力とパリィ入力を同時押しすることでパリィのモーションは出ない。
だが、あえてパリィモーションを出すことでジャストパリィ狙いを兼ねる、というのが狙いだろう。

システム上、パリィ後には数フレームの間ガード以外できない“隙”が存在しており、そのフレームを投げられてしまうとパニッシュカウンター扱いとなりドライブゲージを大きく消耗する。

ボンちゃん選手はパリィからドライブラッシュすることで、投げられてもパニッシュカウンター扱いではなくしつつ、ついでに攻めを継続するという入力を実践投入していたのだ。

ついでに攻め継続ができるお得な連携だ。

ふ~ど選手の立ち強キックなどを中間距離でジャストパリィしていた裏で、こういう隠れた入力、格闘ゲーム用語で言うところの“仕込み”を都度行っていたのだろう。

こちらは、「ストリートファイター6」の共通機能であるリプレイルームでも確認できるので、ぜひ気になった人はボンちゃん選手を検索して見てみてほしい。

■来年のSFLにはCrazy Raccoon、IBUSHIGIN、REJECTが参戦決定!

最後に、発表された新情報をまとめてご紹介していこうと思う。

「CAPCOM CUP X」日本時間2024年2月17日より開幕

優勝賞金100万ドルをかけて、世界最強を決める大会「CAPCOM CUP X」が日本時間2月17日より行われることが改めて告知された。また、本日優勝したFAV gamingが日本代表として出場する「ストリートファイターリーグ: ワールドチャンピオンシップ 2023」も同期間中に開催される。

ぜひ、日本を背負って立つFAVを応援しよう!

来年度ストリートファイターリーグは7月開幕

来年度のストリートファイターリーグは、競技タイトルは「ストリートファイター6」で2024年7月に開幕することが発表された。また、来年度のリーグからは、Crazy Raccoon、IBUSHIGIN、REJECTの3チームが新たに参加することが発表された。

これにより、合計12チームが参加する形となり、6チームごとに分けた2リーグ制になるとのこと。来年度のチームがどういったものになるか、注目していきたいところである。

■試合後インタビュー FAVの取っていた対策は“マンツーマン”

最後に、優勝したFAV gamingのインタビューをお届けする。

――今回、ときど選手が控え選手となった理由はあるのでしょうか?

ときど:僕は板橋ザンギエフ選手に対して出るつもりだったのですが、板橋ザンギエフ選手が出てこなかったんですよ。2巡目のアウェイ側は1巡目で勝った選手が行くことにしていたのですが、1巡目はFAVが全勝だったので僕が出なかった、という形ですね。

――2ndステージでは不調だったSako選手が、今回フルで出場すると決めた経緯もお聞かせ願えますか?

Sako:FAVはマンツーマンでそれぞれ対策を行っていて、僕はナウマン君に対して対策していました。自分がまけてしまった場合は他の人にお願いする形を想定していましたね。ですが、1戦目で上手いこと勝てたので、2巡目のアウェイも引き続き出ることにしました。

――ボンちゃん選手はエースということで、対策されることは想定されていたと思いますが、対策に対してどういった練習過程を取ってこられたのでしょうか?

ボンちゃん:誰が大将できても俺が受けるっていうのが一番最初の作戦でした。ただ、最終的に板橋ザンギエフ選手が来た時だけ、ときどがいった方がいいかもねって話に落ち着きましたね。ただ、アウェイでは何があっても俺が出るつもりでした。ただ、「ふ~ど君でしょ?」って思っていたので、ふ~ど君と板ザンさん(板橋ザンギエフ選手)の対策は多めにとっていました。

――ときど選手が試合画面を録画していたのはどういった理由があるのですか?

ときど:あれは、今起きた試合を巻き戻したりするために録画していたものです。アメフトの選手が同じことをやっていて、カッコいいなと思ったんですよ(笑)。ミスした時にタブレット端末でミスを見返していて。「これは使える!」と思ったので、SFLの時はいつも録画していました。(ボンちゃん選手に)助かった?

ボンちゃん:助かりました! あざっす! 「撮っておいた方がいい?」って聞かれたんですけど、断っていたんですよね。それでもときどは録画していてくれて、負けたときに自分の試合を見せてもらえてすごく参考になりました。ありがとうございます。

ときど:いえいえ(笑)。

――SFLはポイント逆転が多いと思いますが、リーチ間近の2巡目大将戦の時の心境を聞かせていただけますでしょうか?

ボンちゃん:2巡目の時は、アウェイにもかかわらずチームメイトが2連勝してくれたんで、「大丈夫?」みたいな気持ちでした。しかも、2巡目の時は自信あったんですよ。結構ミスしたけど勝てちゃったんで。その内容を踏まえていけると思ってたら0-3で負けちゃったんですけど、リードしていたので「いや~、あの人強いっすね~」みたいな楽な気持ちで戦えました。

――2巡目大将戦をご覧になっていたメンバーの皆さんはいかがでしたか?

Sako:結構、守り気味の闘い方をしてふ~ど選手にやられちゃったんで、そこが改善出来たら全然勝てると思ってました。なので、そこまであの敗北を気にしてはいなかったですね。信用していたので。

ときど:ふ~ど戦は良くも悪くもボンちゃん次第なので、一回目勝った後に二連敗すると流れが悪くなるので、僕が3巡目で出る可能性も全然ありました。なので、出た時を想定して勝てるように対策を考えていましたね。

りゅうせい:先にリードした側が逆転されるという事が今までのリーグでもあったので、勝ってる事実に不安を感じていました(笑)。ただ、短期戦で負けることはよくあることですし、ボンちゃん選手なら修正して勝ってくれるという信頼感はあったので、すごく頼れるチームメイトだったと思います。

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