トム・ペティが大ヒット!超人気ゲーム「グランド・セフト・オートVI」でリバイバル  驚異的な再生回数!トム・ペティの「Love is a Long Road」その理由は?

リバイバルヒットで注目を集めているトム・ペティ「Love is a Long Road」

ポップミュージックの歴史の中で、リバイバルヒットというのがある。最近ではフリートウッド・マックの「ドリームス」がTikTokでバズったり、ケイト・ブッシュの「神秘の丘」がネットフリックスで配信されているSFドラマ「ストレンジャー・シングス」で取り上げられてリバイバルヒットとなっている。

以前は映画の挿入歌やCMで使われてリバイバルヒットヒットになるようなイメージだったが、最近ではインターネット絡みでリバイバルするものが多くなっている。21世紀に入ってから20年以上経過しているのだから、ヒットソングが生まれるメカニズムが変わっていくのも当然のことなのだろう。

そして、2023年も押し迫った12月、意外な曲が注目を集めている。何とトム・ペティの「Love is a Long Road」なのだ。超人気ゲームの最新シリーズ『グランド・セフト・オートVI』の第1弾トレイラー映像に、トム・ペティの「Love is a Long Road」が全編にわたって使用されたことを受け、この楽曲が約47万%という驚異的な上昇を記録している。

2023年12月5日に公開されたトレイラー映像はYouTubeにて音楽ビデオを除き、公開24時間で最も再生された映像や、音楽ビデオ以外で最も早く1億再生を記録、最も「いいね」されたトレイラー映像などを記録している。47万%上昇とか言われても全く実感がわかない数字なのだが、天国にいるトムもハッキリ言って寝耳に水だろう。

最新の人気ゲームとトム・ペティ。意外な組み合わせとしか言えないわけだが、どんなキッカケにしろトム・ペティに再び大きな注目が集まることはファンにとっては大変嬉しいこと。せっかくなので今回のリバイバルヒットに乗っかって「Love is a Long Road」が収録されており、彼の最初のソロアルバムにして大ヒット作である『フル・ムーン・フィーバー』を取り上げてみよう!

プロデューサーはジェフ・リン、トラヴェリング・ウィルベリーズへの布石

1989年、トムのソロ名義でリリースされたアルバム『フル・ムーン・フィーバー』の収録曲である「Love is a Long Road」は当時、シングルカットすらされていない。ハードかつ苦みを感じさせる曲で、シングル向きの曲ではなかったからだろう。この曲は、アルバム『フル・ムーン・フィーバー』の中でも硬派な出来栄えで、これ以外の楽曲は落ち着いたトーンのものが揃っており、それまでにリリースされたトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ名義の作品よりもリラックスした分かりやすいアルバムに仕上がっている。

そのポップな音像を作り上げた張本人は、プロデューサーのジェフ・リンと言って間違いない。トム・ペティとジェフ・リンの組み合わせといえばトラヴェリング・ウィルベリーズが思い起こされるが、レコーディングが始まった順序でいくと、『フル・ムーン・フィーバー』が先で、ここでの共演がトラヴェリング・ウィルベリーズに持ち込まれた。

ハートブレイカーズと共に制作した作品はバンドサウンドを基調としたものだったが、本作はトムのソロアルバムであるため、弾き語りに近いフォーク調のものからELOにかなり近いポップな音像が施された曲まで収録されている。明らかにロックバンドの音ではなく、シンガーソングライターとしてのトム・ペティが優先され、また、シンガーソングライターとしての才能が遺憾なく刻み込まれた作品だ。

セールスも当時アメリカではビルボードのアルバムチャートで最高3位まで上昇し、シングルも3曲がトップ40ヒットとなった大ヒット作だ。

訃報から7年、天国でニヤつくトム・ペティ!?

2017年のトム・ペティの訃報から、早いもので7年が経とうとしている。

天国にいる彼は、自分の楽曲が最新ゲームで取り上げられている今の状況をどう思っているのだろう?きっと「今のヒットチャートにロックンロールが割って入る余地があるなんてビックリだせ」とかニヒルにニヤニヤしながら言ってそうな気がする。

正直、棚からぼた餅のリバイバル・ヒットなのだが、これを機にトム・ペティの再評価が高まることを期待したい。特に日本におけるトムの人気や評価は本国アメリカのそれと比較するとかなり寂しいものがあるのだが、最新人気ゲームのトレイラーから火がつくなんてシチュエーションを一体誰が予想できただろうか?

「おいおい、どうせならオレが生きているうちにこんな美味しい思いをしたかったぜ!」

ーー やっぱりニヤけながらトム・ペティはボヤいてそうだな。

「グランド・セフト・オート」におけるラジオ局と音楽

さて、最後に今回のリバイバル・ヒットのキッカケとなった人気ゲーム『グランド・セフト・オート』シリーズにおける音楽の設定について言及しておこう。

ゲームの中では車に乗るシーンにおいて、プレイヤーが自由にラジオ局を選べる設定になっており、現時点での最新版『シリーズV』では15局のラジオステーションが用意されている。ゲームの舞台も架空のマイアミという設定なので、ラジオステーションの音楽も現実のアメリカと同様にジャンルごとに分かれており、カントリー局、パンク局、ヒップホップ局、懐かしのロック局などが用意されている。

今までにリリースされたシリーズの中でもガンズ・アンド・ローゼズ、Dr.ドレ、ジェリー・リード、フィル・コリンズなど実に様々なジャンル、年代のアーティストの楽曲が登場する。

今回のトム・ペティのリバイバルは2025年にリリース予定の最新シリーズ『グランド・セフト・オートⅥ』のトレイラー第1弾で使われたことが契機となっており、今後、続くであろう第2弾以降のトレイラーでも過去の名曲がカッコよく使われることが予想される。

そして、リマインダー世代の我々にお馴染みの楽曲がリバイバルヒットした際には物知り顔で若者たちに音楽トリビアをレクチャーするのも悪くない。ただし、やり過ぎると老害になるので、そこは皆さん(私も含めて)細心の注意をはらって、スマートに対応することがとても大切だと自分に言いきかせなくてはなりませぬぞ。

カタリベ: 岡田 ヒロシ

アナタにおすすめのコラムアメリカンロックのアウトロー、トム・ペティは「なんかいい」のだ

▶ トム・ペティのコラム一覧はこちら!

80年代の音楽エンターテインメントにまつわるオリジナルコラムを毎日配信! 誰もが無料で参加できるウェブサイト ▶Re:minder はこちらです!

© Reminder LLC