タバコの煙が犬のガンの発生率を高くするという研究結果

タバコの煙とスコティッシュテリアに多いガンを関連を調査

タバコは喫煙者だけでなく副流煙が受動喫煙となり、周囲の人々の健康も害することはたびたび警告されています。

人間の近くで暮らしている犬に対しても、タバコの煙が悪影響を及ぼすことはもちろんですが、病気のリスクなどがどのくらい高くなるのか詳細に知ることは予防のためにも必要です。

アメリカのパデュー大学の比較腫瘍学の研究チームは、120頭のスコティッシュテリアを対象に3年間にわたって健康状態と生活環境(住居の地理的条件、食物、タバコや殺虫剤など化学物質への曝露など)についての調査を実施しました。

その結果、タバコの煙とスコティッシュテリアに多く発生するガンとの関連が明らかになりました。

タバコの煙はスコッティの膀胱ガンリスクを6倍に高める

スコティッシュテリアが研究対象となったのは、この犬種は遺伝的に膀胱ガン(尿路上皮ガン)のリスクが高いことがわかっているからです。尿路上皮ガンはほとんどの症例で致死的な経過をとるため、この病気の予防策の研究は重要です。

尿路上皮ガン好発犬種であるスコティッシュテリアで、ガンが発生した個体と発生しなかった個体では生活環境などにどのような違いがあったのかを明らかにし、犬だけでなく人間のガン予防にも活かしていくのが、この調査のねらいです。

調査に参加した120頭は、6歳以上で尿路疾患の臨床症状や尿路ガンの既往歴がない個体です。この120頭の3年間にわたる調査は過去の記事でもご紹介したことがあります。

『スコティッシュテリアの膀胱ガンを早期発見するための研究』
https://wanchan.jp/column/detail/36343

この調査では、3年の調査期間中に32頭の犬で膀胱ガンが発見されました。飼い主が回答したアンケートと、犬の尿を分析してニコチン代謝物質(コチニン)が含まれるかどうかを調べた結果から、タバコの煙にさらされた犬はそうでない犬に比べて、膀胱ガンを発症する可能性が6倍も高いことがわかりました。

研究者はまた、犬が直接タバコの煙を吸い込むことの他に、服についた煙(=化学物質)も犬の健康を損なう可能性について言及しています。

これは飼い主が喫煙者ではないのに微量のニコチン代謝物質が検出される犬がいたことから、外出先などで服についたタバコの煙が影響を及ぼしたと考えられるからです。

愛犬の健康を守るために飼い主ができること

スコティッシュテリアは遺伝的な要因によって、膀胱ガン(尿路上皮ガン)になりやすい犬種ですが、全てのスコティッシュテリアが膀胱ガンになるわけではありません。

また、喫煙者と暮らすスコティッシュテリアが全て膀胱ガンを発症するわけでもありません。これは人間の場合も同じです。

この調査による発見は、遺伝的な要因と生活環境との複合的な影響がどのようにガンと関連しているのかを研究する機会につながります。

タバコの煙の他に、湿地帯から1.5km以内の場所に住んでいることも膀胱ガンの発症と関連していることがわかったのですが、タバコの煙は居住地の条件に比べて改善することがずっと簡単です。(湿地帯の影響は、このような場所で多く散布される殺虫剤のせいではないかと推測されます。)

愛犬のガン発症リスクを低下させるために、飼い主はタバコを止めるか犬から離れた屋外で喫煙し、煙のついた服は犬と触れ合う前に着替えることが大切です。これはもちろんスコティッシュテリア以外の犬種でも同じです。

研究者は飼い主自身の健康のためにも、喫煙を完全に止めることを勧めています。

まとめ

120頭のスコティッシュテリアを対象にした調査から、タバコの煙への曝露はこの犬種に多い膀胱ガンのリスクを6倍も高くするという研究結果をご紹介しました。

このような研究結果は、犬と人間両方のガン予防さらにはガン治療の開発につながることが期待されます。また私たち飼い主の身近な問題として、愛犬が健康リスクに晒されることを防ぐための知識としても大切です。

《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.tvjl.2023.106044

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