「映画文化のためなら…」小泉今日子がクリスマス返上で下町のミニシアターに駆けつけた理由

昨年12月25日の夜、東京・墨田区にあるわずか49席しかないミニシアターの前に小泉今日子(57)の姿があった。寒空の下、詰めかけたファンたちのサイン攻めに快く応じていた小泉。東京の下町に突如現れた元トップアイドルに、通りがかりの地元民たちも驚き、足を止めていた。

小泉はこの夜、ミニシアター「Stranger(ストレンジャー)」で上映された映画『風花』の一日限りのトークイベントに登壇していた。

「映画は『セーラー服と機関銃』などの代表作で知られる故・相米慎二監督による’01年公開のロードムービー。小泉さんは三十過ぎの風俗嬢役を演じています。’15年に会社を設立して今でこそプロデューサー業にまい進する小泉さんですが、この作品ではあくまで出演者の一人でした。20年以上も前の出演作の再上映のために、本人がミニシアターに駆けつけるのはかなり稀なことでしょうね」(映画関係者)

クリスマスの夜に小泉がわざわざミニシアターを訪れた理由はなんだったのだろうか。本誌はStrangerの代表を務める岡村忠征さんに話を聞いた。

「当館で相米慎二監督の特集をすることになり、遺作となった『風花』に出演していた小泉さんにぜひご登壇いただきたいと思い、個人事務所の問い合わせフォームから依頼のメールを送ったんです。すると、『相米さんの特集ということでしたら是非お願いします』というメールの返信が小泉さんからあり、驚きました。その後の日程や当日の駐車場の位置までご本人と直接やり取りさせていただきました」

イベントでは上映後に小泉が登壇して客席に向かって話をするアフタートークが行われ、通常のチケット代のみで誰でも参加できたという。

「チケットは発売開始から10分で予約が埋まってしまう最速記録。当館が始まって以来のビッグゲストでした。それまで小泉さんというとタレントやアイドルというイメージが強かったのですが、当日は相米監督の演出方法などをご自身の言葉で丁寧に説明されていて、『相米監督について語り継いでいきたい』という使命感みたいなものを感じましたね。映画を見慣れているお客さんたちからも『今や映画人なんだな』という声が上がっていました」

動画配信サービス全盛の昨今、全国のミニシアターはコロナ禍の影響から立ち直れず経営難にあえいでいる。東京の東エリア唯一のミニシアターとして、’22年に岡村さんがオープンさせたStrangerも黒字化できない状況が続いており、2月1日より新会社に経営が引き継がれることが決まっているという。

街の小さな映画館を絶やしたくないと願う“映画人”小泉の想いはどう紡がれてゆくのだろうか――。

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