加藤シゲアキ 小説「なれのはて」出版時の葛藤と決意 爆笑問題・太田光と振り返る

TOKYO FMで月曜から木曜の深夜1時に放送の“ラジオの中のBAR”「TOKYO SPEAKEASY」。今回のお客様は、爆笑問題・太田光さんと、NEWS・加藤シゲアキさん。小説家としての一面も持つお2人が、小説や芸能界など、幅広いテーマで真剣に、ときに笑いを交えながらトークを繰り広げました。

(左から)太田光さん、加藤シゲアキさん

◆直木賞ノミネート作品「なれのはて」出版前に…

加藤:(自身の小説)「なれのはて」を担当編集者に渡したのが、昨年の1月末だったんですよ。直しながら話しているときに、うちの会社の問題が出て……。

太田:そのときはどんな気持ちだったの?

加藤:「いや~、うそだろ?」とも思いましたけど……。(出版するか)めっちゃ悩みました。

太田:だって読んだほうは絶対、「そこを意識して書いてるな」って思っちゃうもんね。

加藤:意識して書いたら間に合わない時期ではあったんですけど。でもそこで、僕も起きたことに対して厳しい視点で全部読み直してみたんです。「この作家は嫌いだ」というイメージで。

太田:うん。

加藤:全部読んで「どこを指摘されるかな」って思ったんですけど、あんまり都合よくは書いていなかったから「大丈夫かな」っていうので自分のなかでも折り合いがついたし、周りの人に読んでもらっても「大丈夫だと思います」「これはむしろ書き残しておくべきじゃないか」って……。

太田:俺もそう思うよ。

加藤:結果、蓋を開けてみると読者やファンの方々も、基本的には好意的に受け止めてくれたのでよかったです。僕がビビりすぎていたのかもしれないですけど。

太田:でも、それは当然そうなるよ。自分の環境が劇的な変化をしているなかで、世間なんていってみれば手のひら返しみたいなところもあるし。俺もテレビ局に対して「そこまで変わるの?」みたいなことがあったりするから、ビビるっていう言葉が正しいかどうかはわからないけど、やっぱり怖かったりすることは絶対あったと思うよ。

加藤:自分の作品に対しては責任が取れると思うんですけど、誰か違う人に……。

太田:ほかに波及しちゃうとな。

加藤:そうなんです。(小説の)なかでも、ちょっと発達障害のことを書いたりしていて、すごくセンシティブでデリケートな部分も書いているから、いろいろな方々が傷つかないように配慮しながら書く。これってものすごく難しいんですけど、「じゃあやらないのか」っていうと、そこは作家として負けを認めたことになるから、とは思いましたね。

太田:一人ひとりの登場人物にそれなりの正義があって、その正義と正義が食い違って話が進んでいくわけだけど、人物の1人をちゃんと人間臭く描写することによって、きっとそのへんはクリアになっていくよね。

加藤:自分を擁護するために書いたわけではないので、恐らく大丈夫だなと思ったし、うれしかった部分でいうと、むしろ一連の報道で傷ついた方もたくさんいて、そういう人たちにとっては救いになったっていう部分もあったそうなんですね。それは自分も経験したことがあるし、小説の持つ力みたいなものだから、結果的には悔いはないです。

<番組概要>
番組名:TOKYO SPEAKEASY
放送日時:毎週月-木曜 25:00~26:00
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/speakeasy/

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