学生向け格安レンタカー 慶大生がベンチャー 車離れに危機感

 学生の車離れに歯止めをかけようと、慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC、藤沢市遠藤)の学生が立ち上がった。ベンチャー企業を設立し、主に学生向けの格安レンタカー事業をSFC近くのシェアオフィスで開始。金銭的な負担感をやわらげ、車に親しむ機会を増やすことを狙う。

 学生による学生のためのレンタカー事業を始めたのは、藤沢市在住でSFC総合政策学部3年の上野啓太さん(20)。ベンチャー企業「シティ・アライアンス」を立ち上げ、昨年12月に事業許可を取得した。

 事業資金として両親に25万円を借り、8人乗りの中古ミニバンを購入。走行距離は17万キロ超で車体に擦り傷もあるが、性能自体は問題ないという。事業は4月下旬にスタート。完全予約制で誰でも利用でき、学生には24時間5千円の安値で提供している。

 オイルやタイヤの点検、清掃など日々のメンテナンスは自ら行い、法定点検は専門業者に依頼する。上野さんは「もともと傷があるので、多少増えてもうるさく言わないつもり。気兼ねなく乗ってほしい」と中古車の利点を強調する。

 事業に着手した理由は、もともとが車好きで学生の車離れに心を痛めていたから。これまで公共交通の充実をテーマに学んできたこともあり、レンタカー事業が車をシェアする仕組みづくりにもなると考えた。

 学内でアンケートを取ったところ、多くの学生が金銭的な理由から車への関心を低下させていることが分かった。格安料金にこだわるレンタカー事業への挑戦を決め、昨秋に学生仲間と活動を本格化させた。

 学生企業は社会の厳しい“洗礼”も受けた。

 東京都内の事業者とリース契約を結んで車4台を導入し、今年1月から貸し出し業務をスタートしたが、知名度の低さから利用実績は見込みを大きく下回った。台数を減らし固定費を削ろうとしたが、リース業者との交渉が決裂。事業はわずか2カ月で頓挫した。

 「諦めかけたが、仲間の支えで何とか踏ん張れた」と上野さん。甘い事業予測を反省し、まずは2カ月の事業の中で、サークル活動などで借り手の多かったミニバン1台に絞って再出発することにした。

 もちろん、1台では自身も含めて人件費まで捻出できないが、上野さんは「当面は黒字を出すより赤字を減らしつつ認知度を広めていきたい」とする。10年落ちの中古車なら20万〜30万円で買えることもあり、「サークル活動が活発になる夏休みなど、需要に応じて台数増も検討していきたい」と展望を語った。

 問い合わせは、同社電話080(4098)0747。

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