初めて芝居が楽しいと思えた ドラマ「下剋上球児」楡伸次郎役・生田俊平さん(青森県つがる市出身)

「下剋上球児」で着用したユニホームを着て活躍を誓う生田さん=つがる市役所

 つい話しかけたくなる、愛嬌(あいきょう)たっぷりの表情が印象的だ。昨年10~12月に放送されたTBS系日曜劇場「下剋上(げこくじょう)球児」に、メインキャストの一人として出演した俳優の生田俊平さん(25)=旧柏村(現青森県つがる市)出身。身長170センチと小柄だが、元高校球児の名にふさわしい、がっちりした上半身がトレードマーク。今後の活躍が楽しみな有望株だ。

 下剋上球児は甲子園出場を目指す弱小高校野球部の監督、部員、その家族らの人間愛を描いた物語。鈴木亮平さん、井川遥さん、黒木華さんらキャストは豪華だ。生田さんは高倍率のオーディションで球児の一人をつかんだ。「野球の実力はあるがマイペースで自由奔放な性格」という役柄の楡伸次郎(にれ・しんじろう)を演じきった。

 放送前は約300人だったインスタグラムのフォロワーが、約2万4千人に増加。監督や共演者からは心で芝居をしている-と評された。「自分らしさを出せたし、初めて芝居が楽しいと思えた。この世界でやっていきたい」

 子どもの頃から野球漬けだった。柏中学校時代は硬式野球チーム「弘前白神リトルシニア」で打撃を磨いた。青森山田高校に進んで甲子園出場を経験、2年生秋の明治神宮大会では代打出場で決勝打をたたき出した。仙台大学に進んでからも野球の道を歩んでいたが、途中で壁に直面。周囲との実力差に「野球でご飯を食べていくのは無理だ」と思い知らされた。

 進路を考え直すと、野球と同じぐらい情熱を注げるものとして芸能活動が浮かんだ。人前に立つことが好きな自分が、人柄やキャラクターが求められる世界でやっていけないだろうか-。そう思って俳優を意識するようになった。

 卒業後、ある芸能事務所の養成所に通って未経験の演技のレッスンを受けていると、事務所関係者らから「面白い人だね」とよく声をかけられた。2022年2月に現在の芸能事務所に入りさまざまなオーディションを受けていくと、野球関連のドラマや広告の仕事が入るように。「芸歴や役者の経験がない自分が受かったということは、何かしら可能性があると思った」と生田さん。愛嬌ある雰囲気、体格の良さ、野球の実力校出身…。そんな要素が武器だと感じている。

 とはいえ、芝居はまだまだ修業中の身。これからも苦労するかもしれないことは覚悟の上だ。最近、人の会話を聞いたり人が泣いている場面を見たりすると、ドラマのシーンに置き換えて考えるようになった。野球に関係ない役柄にも挑戦していきたいという。

 実家は「イクタ釣具店」。生田さんは「やりたいことをやらせてくれている両親には感謝しているので、恩返ししたい。自分の存在を知って『釣具店行こうか』という人が増えればいい」とほほ笑む。県民に向けては、「下剋上球児に出て応援メッセージをたくさん頂き、励みになった。これからも頑張るので、長い目で応援していただきたいですね」。

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 <いくた・しゅんぺい 1998年4月生まれ、つがる市柏地区出身。東京都在住。青森山田高校硬式野球部時代には明治神宮大会、選抜高校野球大会に出場した。2022年2月から本格的に俳優として活動。WOWOWオリジナルドラマ「ドラフトキング」、デサントジャパンのPRムービーなどに出演。最近では、23年10~12月のTBS系日曜劇場「下剋上(げこくじょう)球児」に出演し、人気を呼んだ>

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