1949年創業の老舗「のむらとうふ店」歴史に幕 青森・野辺地町 「お客さんに感謝しかない」

工場で歴史を振り返る野村さん

 1949年創業の青森県野辺地町の老舗豆腐店「のむらとうふ店」が昨年12月21日の営業を最後に廃業した。同町を中心に出荷。手作りと豆にこだわり、地元に長く愛されてきた。2代目店主の野村卓哉さん(68)は70歳を迎えるまで続けるつもりだったが、野村さんと妻・祐子さん(67)が昨年12月に体調を崩したのをきっかけに、廃業を早めた。野村さんは「今までうちの豆腐を愛してくれたお客さんに、『ありがとう』という感謝しかない」と話している。

 同町には昔から豆腐を使った郷土料理が多かったため、野村さんが幼い頃には町内に十数軒の豆腐店があったという。野村家は豪商の7代目野村治三郎の分家で、屋号は「立鼓三(りゅうごさん)」。1901年に分家してから、野村さんは立鼓三の5代目に当たるという。かつては古着や布などを販売してきたが、父・修三さん(2004年に86歳で死去)の代から豆腐店を営んできた。

 野村さんは27歳で店を引き継いだ。県南地方で主流の木綿をメインとした一般的な豆腐のほか、30歳の時から「価格が高くても、おいしい豆腐を作りたい」と、青森県産の「オクシロメ」と宮城県産の「ミヤギシロメ」をブレンドした「昔のとうふ」を作り始め、看板商品となった。

 ほかに、おでんや大型のがんもどきや油揚げなど、大手との差別化を図るため、特徴のある商品も作ってきた。

 近年は夫婦だけで豆腐製造に携わり、体の負担も考え、かつては午前4時から作業を始めていたが、午前中の遅めに始めるようにしていたという。昨年12月中旬になり、野村さん、祐子さんが相次いで発熱し、繁忙期の年末を控え「夫婦だけで乗り切るのは厳しい」と急きょ廃業を決めた。出荷先の個人商店の減少、急激な原料・資材・燃料高、後継者不在も廃業を早めた背景にあるという。

 少し早い引退に、野村さんは「町内でそれぞれ商売を頑張ってきた仲間には申し訳ない」と話す。自宅脇の工場に来ると、1月に入った今も寂しい思いを抱くことがあるという。急きょの廃業に「なぜやめたの」「大変だったね」と声をかけられる。「たくさんの励ましの言葉に支えられ、おいしい豆腐を作ろうと頑張ってきたが、ちょうどいい潮時だと思う」と感慨深げに語った。

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