震災で自宅倒壊、優しい母と赤いほっぺの末妹が下敷きに 残された姉妹「2人を忘れない」

震災で母親と妹を亡くした中地英子さん(手前)と濵口多恵子さん=17日午前10時7分、神戸市中央区、東遊園地

 大阪府豊中市の中地英子さん(48)と、同市の濵口多恵子さん(47)姉妹はあの日、神戸市東灘区御影中町の自宅が倒壊し、優しかった母と、11歳だった妹を失った。2人の面影を求めて、今年も一緒に東遊園地を訪れた。

 猛烈な揺れで、自宅は全壊した。2階で寝ていた英子さんと多恵子さんは無事だったが、1階にいた母の濵口寛子さん=当時(45)=と末妹の佳子さん=同(11)=は下敷きになった。

 昼過ぎには、父親や近隣住民が助け出した。2人はきれいな顔だったが、既に亡くなっていた。近くの中学校の遺体安置所に運ばれる遺体の横で、姉妹は泣きじゃくった。

 子どもにはいつも優しい母親だった。「なんで私も一緒に連れて行ってくれなかったん?」。姉妹は誰にもぶつけようのない絶望を抱えて暮らした。

 年の離れた妹の犠牲は、姉妹をさらに苦しめた。いつも赤いほっぺがチャームポイント。自転車をびゅんびゅん飛ばす、笑顔のまぶしい妹だった。家族旅行で行ったテーマパークでの楽しそうな姿を、今も思い出す。

 打ちひしがれた感情は、家族や親類、友人の支えで徐々に癒やされていった。それでも、2人の存在を忘れることはない。

 英子さんは今でも、佳子さんの夢を見る。大抵は当時の顔だが、時々、40歳くらいの姿も見るという。英子さんは「夢の中でも一緒に年をとるんやね」とさみしげに笑う。

 姉妹は元日に発生した能登半島地震の被害に心を痛める。かつて別の地震のニュースを見て3~4日間眠れなくなったことがある英子さんは、今回もニュースを直視できないという。

 石川県にも、大切な家族を失った人がいる。英子さんは「つらいことが多いと思う。でも、残された人もどうか頑張って生きてほしい」と願う。「『生かされた命』を大切にしてほしいから」(杉山雅崇)

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